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□甘く痺れるかなしばり
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彼の優しい声音が私の耳をくすぶる。
あぁ、それだけで。
それだけで私はもう動けない。
好きだよ、と唇を動かしてみても、声は出なくて。
ただひたすらに、もどかしい。
「名字さん。ちょっとええか?」
白石くんからの誘いを断るなんて出来なくて。
言葉もないまま廊下を歩いた。
彼が言葉を紡ぐ度、それは甘い甘いひとつの糸になって私を縛る。
ただ私の名前を呟くだけで
私から発言権を奪うのだ。
それはまるでかなしばり。
「好きや。この世で一番名字さんを愛しとる。」
あぁ、また。
彼の優しい声音は私から拒否権を奪っていく。
でも、まぁ。
拒否する気なんてこれっぽっちもないのだけれど。
「白石くん。」
私もあなたを愛しています。
甘く痺れるかなしばり
彼の言葉はまたしても、私を縛り
それからそっと・・・
私の唇に口付けた