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□上手なキスの仕方を教えて
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赤い夕日が私たちを照らす。
じりじりと焼けるような日差しがほんのりと暖かなモノに変わるこの時間。
ちらりと目の前をミルクティー色の影が視界を遮った。

あぁ、むかつく。
こいつはいつだって完璧と呼ばれるようなタイミングでキスをするのだ。
こっちがする隙を与えない程に。

「なぁ、たまには俺も名前からしてほしいねんけど。」

「・・・嫌よ。」

だって私は貴方程完璧にキスをすることなんて出来ないもの。
そう続く言葉は呑み込まざるを得なかった。
ふわりと香るシャンプーの残り香のせいで。
仄かな甘い香りに混ざっての汗の匂い。間違いなく蔵ノ介の香り。
それは、数秒を待って離れていった。

「・・・なぁ、名前。」

蔵ノ介は先ほどよりも甘さが2割り程増した声で強請る。
分かって、いるのだろうか。自分が私にキスをすればする程此方はキスをするのに躊躇してしまうことを。

あぁ、そうか。
だったら、

「ねぇ、蔵ノ介。」






上手なキスの仕方を教えて



そしたら私もしてあげる









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