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□てるてる坊主の恋
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やむことを知らない雨を前に、久しぶりにてるてる坊主を作ってみた。
「子供みたい。」
いつだったか、雨の日にあった彼のことを思い出しながら“名字”と書かれた表札の前にかけた。
それを見て、出掛けてみようなんて。
お気に入りの傘で近くまで。
「なぁ、このてるてる坊主アンタの?」
急に掛けられた声に後ろを振り向く。
もじゃっとした黒髪
猫みたいなツリ目
そんな彼の手には、つい数分前に表札にかけたてるてる坊主。
あぁ、彼は。
「こんにちは。切原赤也くん。」
間違いなくあの時の彼。
「やっぱりアンタか、名前。」
初めて会ったときに2人で作ったてるてる坊主と同じ顔をした私のてるてる坊主。
その反対の手には、彼が作ったであろうもう一つのてるてる坊主。
一瞬風が吹いてきて、
イタズラに2つのてるてる坊主を重ねた―――
てるてる坊主の恋
彼は笑った。
無邪気に笑った
アンタが好きだと笑った
てるてる坊主と同じ
満面の笑みで