V

□Two
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無意識にボールを追いかけた私は、キラキラと光る、テニスコートに見惚れてしまった。

皆が必死にテニスをしている・・・

かっこいいなんてものじゃない。
強くて、
真っ直ぐで。

私にないものだと思う。

拾い上げたボールをいつの間にか強く握り締めていた。

「アリスちゃん。そのボールを返してくれんかのぅ。」

特徴的な声に振り向くと、
さらに特徴的な銀髪さんと、逆光で目が見えない眼鏡さん。

「すみません。」

とりあえず、ペコリと頭を下げてボールを返す。

「あなたは、テニスに興味がおありなのですか?」

私に問いかけたのは、やたら姿勢の良い眼鏡さんだ。

「いえ。でも、皆さんかっこいいですね。キラキラしてて。此処だけ、別世界みたいです。」

私が至極マジメに答えると、銀髪さんはクツクツと笑い出した。

「お前さん、面白いやつじゃ。」

眼鏡さんも“えぇ、本当に。”と同意の意を示している。

・・・私、何か面白いことを言ったのだろうか。

それにしても、この二人。
よく似ている。

顔じゃなくて、動作が。

性格までも、反対そうな二人が似ているなんて、私はどうかしてしまったのだろうか。

「アリスーーーー!帰ろーーーーー!」

遠くで私を呼ぶ声がして、急いで駆け出した。

もちろん会釈も忘れずに。

あぁ、あの人たちは。

まるで双子のディーとダム。

不思議の国の双子さんだ。

似ているようで、似ていない。
近いようで、遠い。

トゥイードルディーとトゥイードルダムは、“アリス”が森の中で出会う双子だ。

それなら、“私”は、
テニスコートという森で、ディーとダムに会ったのだろうか。

そう考えるとワクワクしてきた。

高鳴る胸を押さえて、私はスピードを上げた。





 

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