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□猫に騙されて
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「俺、なまえちゃんの為にテニスやめたんだよん!」

いつもの気まぐれな声に言葉が出なかった。
“どうして?”と聞きたかったのに。

私の為に、大好きなテニスをやめるなんて。
そんなことされたら、私自分が許せない。

ドサリとカバンが落ちた音でようやく菊丸くんがこちらを向いた。
彼女でもない私の為にどうして

「やめないで。」

掠れた声が口から漏れる。

「お願いだから、私の事好きじゃなくてもかまわないから、テニス、やめないで。」

掠れた声と同時に涙も溢れてたみたいで頬が濡れる。

彼の一番はテニスでかまわない。
なのに私は、彼の大事なものを奪ってしまったの?

「なまえちゃん・・・ごめんにゃ。一つ、付け忘れ。」

罰が悪そうに菊丸くんは頬をかいた。

「今日だけ、テニスやめた。」

“君に告白したくて”と付け加えた菊丸くんは私を抱きしめた。

本当に嬉しい。
さっきとは別の涙で頬が濡れる。

ぎゅっと菊丸くんにまわした腕に力を込めた






猫に騙されて

翌日菊丸くんは校庭を30周させられてたけど、
私の前を通るときは必ず“ブイ”と
笑顔を見せていた。

きっと、彼はまた私を騙す。

だけどその嘘が

今度はもっと明るいもので有りますように













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