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□かすかに香る
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仁王くんが、私は嫌いだ。

ふざけて、私をからかって。
それから、独特の甘い声で“なまえ”と呼ぶ。

やめて、私の名を呼ばないで。
心が貴方を求めてしまうから。

仁王くんの、微かに香る香水の匂いが好きだ。

毎日違う香水をつけてるくせに、
たまに私が“その匂い好きだよ”と言うと
1ヶ月は同じ香水をつけてくる。

「のぅ、なまえ。」

「・・・名前呼びを許した覚えはないのだけれど。」

あぁ、今日の香りも私好みだ。

はた、と、手を止めた。
どうして?
香りを変えても、その香水の匂いはどれも私好みの柑橘系だ。

これでは、まるで。

まるで、彼は私の事を好いているみたいではないか。

自意識過剰も度が過ぎると笑えない。

“いい加減気づいてもいいんじゃなか?”と強引に私の顔を上に向けさせる。

「俺は、お前さんのこと好いとうよ」

そう言った仁王くんからは、
私の一番好きな“ユーフォリアブロッサム”の香りがした。






かすかに香る


かすかに香る甘酸っぱい香りは

彼の香水か

それとも

私の恋の香りか










ユーフォリアブロッサム:柑橘系の香水の名前


仁王がなまえさんの香水の好みを知っているのは、柳に聞いたからだといいな。





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