カシャリとその場にそぐわない音が鳴る。
パコーンと黄色い球を打つ音や歓声が沸くその場所でそれはひどく浮いていた。

本当はシャッターを切らなくてもいいのだ。
ファインダーを通して“向こう”が見えれば。

私には眩しすぎて、直視できない。
だけどレンズ越しならといつもこうしてファインダーを覗く。
その向こうには綺麗な、水色、それから、栗色。
その2色だけが色鮮やかに写っていた。

名前は、知っている。日吉若。
クラスも知っている。2年F組。
だけど他には何も知らない。
私が彼を知りたいと思うことにすら違和感を覚えて知ろうとなんて思わなかった。

私はただこのレンズの向こうに彼が居れば、それでもう私の世界は色鮮やかだから。

私はもう一度握ったカメラのシャッターを切った。

そこには少しだけ口角の上がった日吉くんが映り込んでいた




レンズ越しの色






いつだって

貴方の色が

貴方が

映り込んでいます




















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