【短編】

□戦略的撤退
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最近急に不動がチームから距離をとっている気がする

戦略的撤退


それはある日突然だった。不動とは韓国戦以降チームとの間にあった距離は一気に縮まった。実際あの日の前日までは鬼道や佐久間といった帝国トリオや飛鷹や虎丸といったイナズマジャパントリオといった面々と一緒に居るところを良く見かけていた。それなのに…


どうしたんだ?



気にならないはず無かった。


「え?不動?」


だから相談してみた。何となく鬼道や飛鷹に聞く気にはならなくて相談したのは風丸だった。風丸はうーんと考えてから


「ごめん。俺が見る範囲ではそんなこと無いと思うんだが」


「そうか?」


確かに…あんなに距離をとっているのにいつも誰も気にしていない様子で誰も相談に来たりしない


……どういうことだ?


大体自分は誰かから他人のことを聞いて納得する質じゃない


こうなったら…あたって砕けろだ


いつだって人間関係もサッカーで対峙してきた。だから不動のことだって二人でサッカーすればわかるはず


だからその日の練習後にボールを持って不動を追い掛けた



「おーい!不動!」



足の早い不動に追い付くために駆け足で近寄ると渋々といった感じで足が止まる


「んだよ。キャプテンさんよぉ」



斜に構えてこっちを見据え不機嫌そうに返してくる。でもそんなこと気にしない。サッカーさえやり始めれば何を考えてるかなんてすぐにわかることだから!


「なぁ今から俺と二人でサッカーやらないか?」


いつもの笑顔でそう言うと何故か少し不動が笑った気がして…


「はっ。誰が練習後にまたサッカーやる誘いに乗るってんだよ。」


あれ?…誘うの失敗したか?そう思ってたら不動の瞳が怪しく揺れた気がして


「そうだな…やってもいいけどプラスアルファでももらわなきゃやる気でねぇな」


「プラスアルファ?」


聞き返すと何だか不動の顔が近づいてる気がして…え?なんだ?


チュ


聞いたことあるような無いような実感があるような無いようなその感覚に頭が真っ白になる


え?……これって…


「ごちそうさん。じゃ。プラスアルファももらったことだしサッカーやるんだろ?円堂ちゃん?」


にっと笑ってくるその笑顔にやっと正気を取り戻し


「〜〜〜っ」


一気に顔が赤くなる感覚に耳がキーンと悲鳴をあげた気がした





「あ?チームから距離あいてるんじゃねぇかって?んなの決まってるだろ?戦略的撤退っていうんだぜ?円堂ちゃん」




END

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