【短編】

□アブノーマルでもいいんじゃねぇ?
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「あのさ、これ絶対付けなきゃダメなのか?」


さすがに顔が引きつってるのがわかる。


「だーめだ」


すぐにNOが突き付けられる。うん。わかってた…でも抵抗せずにはいれないだろ?


「だ、大体チラって会うだけなんだからブラジャーなんて付ける必要ないだろ?」


「甘いな守は、こういうとこまで見る奴は見るんだよ。それとも男ってばれて女装癖のあるイカレたやつだって思われても良いのか?」


「…っ!」


それは、さすがに困る。固まって二の句が告げれないのを良いことに頭の良い恋人はさらに追い打ちをかける


「せっかくブラやパットを小鳥遊の奴にわざわざ頼んで買ってきてもらったんだからな?しかも下はおそろのショーツ履いてんだし今更だろ」


そうなのだ。俺はただ今女装真っ最中であり俺の恋人はもちろん目の前に居る男で…心底惚れてる…つまり俺は折れるしかないのだ








駅のプラットホームに降り立つ。そこは帰宅時間が重なる学生やらサラリーマンやらでごったがいしていた。そんな俺の手を取りずかずかと進むコイツはなぜかいつも以上にうれしそうで…ちょっと眉間に皺が寄ってしまう。


「ほら、まも。そっちはあぶねぇからこっち側歩け。」


顔が火照るのを感じる。慣れない短いダーク系にさし色にグリーンを入れたセンスのいいチェックのスカートに無地の白い学校指定のようなカッターシャツをふわりと来て裾はしっかりとスカートにインしてある。胸元にはいつもと違って小振りながら膨らみが出来ておりワイシャツの襟のあわせにはふんわりと結ばれたグリーンのリボンが揺れ、トレードマークのオレンジのバンダナは取り去られぴょこっと跳ねてしまう癖っ毛をそのままに足には恋人の要望のまま黒色のソックスと普段全く履いたことのない黒光りする女性モノのローファーを合わせている。繋いだ手の反対にはこれまた都合良く恋人とお揃いのカバンを持たされ、誰の入れ知恵か可愛いキャラクターものの人形が二体対になって付いていのだ。そんな普段とは違いすぎる服装の自分を電車が走らない内側になるべく進路を取り歩いてくれる。まぁそれはいつものことなんだが今日はいつも以上に密着している…気がする。だから少しぼっとしながら人込みの流れに任せて階段を上がろうとしたら急に手を引かれバランスを崩しそうになった。それを難なく受けとめた相手に耳元でささやかれる。


「その格好で階段上ったら間違いなく中が見えちまうぜ?」


すっと自然に腰を抱き寄せエスカレーターに押し込まれ幅の狭い駅のエスカレーターに前後で並ぶ。もちろん俺が前だ…それを良いことに軽くセクハラ紛いにスカート越しに尻を撫でられ


「っ!!おい。明王」


セクハラを咎めるように睨むが効果はないことは知っている


「なんだ?まも。」


昔はほとんど見せなかった笑顔を向けてきて…本当に反則だ。その笑顔についついほだされそのまま改札口に到着してしまう。駅の時計を見れば集合時間まで調度くらいの時間だった。




「え?何で俺も行くの?」

それは数週間前のこと。うっすらと汗ばんだ体を適度な倦怠感が満たしていた。その体を少し乱れたベッドに横たえていると会話の主がペットボトルの水を片手に自分の隣に腰掛け、その水をぐびぐびと飲んで俺に残りを差出しながら話を続けはじめた


「付き合ってる奴が居るから断るっていったら証拠見せなきゃダメだって言われたんだよ。何も言わずに合コン行くより堅実的だろ?」


誉めてくれと言いたげな態度で話す相手を見ながらぐびぐびと水を飲み干す。乾ききって擦れた喉には冷えた水がちょうどよかった。


「そりゃ。明王が合コン行くのは嫌だけどさ…俺がそのまま行ったって信じてもらえないんじゃねぇの?」


俺たちは間違いなく付き合ってる。毎日時間があればこうやって会ってるし、キスだって、エッチだってしてて毎日ラブラブだ…ただ問題なのは俺たちは普通のカップルと違って…お互い性別が一緒だった。


「おぉ。守にしては良いところに気付いたな。だから、女装してけばいいんだよ。」


「はぁ?女…っ…女装?」

何言ってるんですか?明王さん…頭の中が真っ白でまじまじと相手の顔を見てしまう。そんな俺の表情を楽しんでるんだろう。ニヤニヤと笑いながらペットボトルを近くのキャストに置き、のしかかってくる。


「そーそー。守、小柄だし可愛い顔してるから似合うと思うぜ?」


ニコニコ上機嫌な恋人を見れば間違いなくうれしい。ただ言ってる内容に納得できない自分はむっと眉間に皺が寄る。


「で…でも俺、ごっついし…女装だって似合わないと思うし…」


ひどく上機嫌な明王は俺が話してる間に首元に顔を近付けてきて味見でもするみたいにぺろりと舐めてくる。それだけで身体は先程の色濃い事情を思い出しゾクッと震えが走る


「んなことねぇよ。俺以外にもあの堅物の鬼道ちゃんや見た目ばっちり女顔の風丸くんだってまものこと可愛いって言ってるだろ?俺の贔屓目だけじゃないんだぜ?」


諭すように耳元で囁きながら耳たぶに歯を立てられるそんなふうに言われたら頑固だといわれる自分だって決心がぐらぐらと揺らいで来てしまう


「…っ!…あきお…卑怯だっ」


くつくつと喉で笑うのが分かり軽く睨み付ける。するとぺろりと首筋から耳の中まで舐められ、背筋に走ったゾクゾクとした波に耐え切れず甘い声が漏れてしまう


「…ぁっ」


「んっ…まも…俺も嫌なんだぜ?まも以外と合コンなんてさ……俺のためにもしてくれよ」


なっと念を押されるとつい、ほだされて…そのまま頷いてしまったのだ

…しかもあの後腰立たなくなるまでやられちゃったんだよな……最近にしては珍しく恥ずかしい出来事だった…
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