【短編】

□持つべきモノは最大の強敵
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「おい。何してんだ?お前」


急にがらがらとドアが開く音とともに男たちが3人立っていた。

あ!あいつらっ!

そこに立っていたのは意識がなくなる寸前に見た同じクラスのヤツとバットを持っていた奴らだった。

でも…何でだ?全く恨みを買う覚えがねぇんだけど

一人で考え込んだ矢先だった。


ガッ!


拘束されたまま腹部を思いっきり蹴り付けられる。


!!?


急な乱暴に体が追い付くはずもなくえぐるような痛みと共に口内に酸っぱいものが満ちる。間違いなく何も入ってない胃のなかのモノが逆流してきたに違いない。それを吐き戻すこともできずに生理的な涙が溢れる。


くそ!一体どういうことだよ?!


訳の分からぬ暴力にぎっと睨み付けると今度は違うヤツに頬を思い切り殴り付けられる。目の奥に閃光が走り口内が歯で切れる感覚が伝わる。先程の酸味と共に広がる地の味に眉をしかめると殴られた頬がジンジンと疼くような痛みが走りその痛みは時間と共に強くなっていく。

よくわかんねぇけど…どうやら俺はリンチされるらしいな

そう思っていると一瞬暴力が止みぐっと髪を掴まれ無理矢理顔を上向かされる。


「悪いな。お前には罪はないんだけどさ、恨むなら円堂を怨めよ?」


そう言われると再び手を挙げられ殴られると思った瞬間だった


ガッ!ゴッ!バキッ!


ダダダとけたたましい足音と共に骨と骨がぶつかるような嫌な音が辺りを満たし…殴ろうとしていた男と共に全員がばたっとその場に崩れる。


な…んだ?


開けっ放しの体育準備室のドアから入ってくる明かりに逆光になり見えない顔に何もできずに目を見開いていると


「明王…ごめん。遅くなって」


呼ばれた名前とその声に一気に涙腺が弛む。その瞬間ギュッときつく抱き締められて…さらにポロポロと涙が溢れた。


「相変わらず…不動のことになると後先考えないな」

「まぁ。こいつらも自業自得だろうが。」


そう言って部屋に入ってきたのはいつもの二人で訳が分からずに円堂を見る。しゃがんで抱き寄せられてよく見えるようになった顔は見たことない情けない顔をしていて…円堂の手がゆっくりと口のテープを取りながら


「二人が教えてくれたんだ…なんかクラスの女の子が俺に気が合ったらしいんだけど…俺には不動がいるだろ?俺たちがデートしてたの見てたみたいでさ」


「勝手に失恋して勝手に片思いをしていたらしいコイツにそのことを話したらしいんだ。まあ。よくあるやっかみというやつだ。」


「まぁ。この程度で済んで良かったな。俺たちがもっと早くこの話を聞いていれば良かったんだが…怖い思いをさせて悪かったな」


そう付け足してくるのは鬼道と豪炎寺で何が何だか分からないうちに涙は恥ずかしいのに止まることなく流れ続け上手く言葉を紡ぐことができない。そんな俺を見て何か思ったこいつらは


「ふむ。ちょっとはこれで俺たちの有り難みもわかっただろう。怖い思いもしたことだし、今日は円堂を貸し出してやる。」


「なんだそれ。俺ってモノかよ?」


「ははは。モノじゃないがな。良いことも運んでくるが面倒なことも同じくらい運んでくるんだ。俺たちの気持ちを知っておきながら不動を選んでいるのにこうやって協力してる俺たちにももう少し感謝してくれ。」


「ははは…そうだな…ありがとな?鬼道。豪炎寺。」

その言葉に二人の男は倒れこんだ男たちを見渡し。


「こいつらのことは俺たちでなんとかしておく。その代わり埋め合わせもばっちりしてもらうからな?」


そう言ってこともあろうか恋人の目の前で円堂の両頬に二人が口付けすると円堂は苦笑して


「ははは…明王に相談するよ」


と言ってすべての拘束をはずし終わると俺を軽がると抱き上げその場から連れ出してくれたのだった。




END
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