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□朱い紅葉が散ったとき
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ゴーンゴーン……
秋の夕暮れと共に
鳴り響く音を聞きながら
俺は朱色の紅葉を、
柔らかに手にとる。
「森滋。」
名前を呼ばれて振り返ると、
そこには知らない少年。
若干赤が入った茶髪。
綺麗な茶色い瞳。
「森滋、っていうんだろ」
会ったこともないそいつは
そう言って微笑を浮かべる。
「違う。」
なんでそう、
答えてしまったのか
自分でも分からない。
戸惑ったのか、悔しかったのか。
―――どちらにしろ、
多分そいつは分かってたんだ。
俺がしらない俺の気持ちを。
「あんた、誰。」
そう聞くと、
少年はふふふと笑みを
零して手招きする。
「一緒に遊ぼ。」
「………。」