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□朱い紅葉が散ったとき
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―――――……
――――――………


朱い葉が、俺を包む。
ああ、温かいな。
あいつに包まれてるみたいだ。


淡い子守唄のように
俺を手で掬って、
まるで、おれがとんぼの
羽であるかのように
柔らかく包んで、
そして……。







「………んっ……」

ゆっくりと瞼を開く。
ああ、寝ていたんだと
始めて気付いた。

辺りがあまりに眩しくて、
思わず目を細める。


そのとき。
ふと、聞き覚えのある
声が聞こえてきた。


「森滋。起きたのか。」


幼馴染 本多岳 だと気付いたのは
少し経ってからだった。
なんだか、毎日聞いてる
彼の声を懐かしく感じた。

やっと目が明かりに
慣れてきたのか、
普通に開く事が出来た。
岳は、台所で
刃物を使い何やら切っていた。

そういえば、
食欲を誘う匂いがする。



ほわっと
温かさが染みるような…



………温かさが…



 温もり…………




「岳っ!!」

ふいに思い出すものがあった。
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