闇の末裔

□これから…。
1ページ/7ページ

‘ああ…、ドキドキします。’

これから一世一代の大勝負。
緊張して、口が乾く…。手が震えて…。

‘大丈夫、歯は磨いたし、シャワーも浴びた。下着も新しい物に変えた。それから…。’


「巽さん!」

思考中断させる、甘い深みのある独特の声。
邑輝一貴かの人だーー。

優雅な動作で、車から降りてくる。
姿を見てしまうと、掛けられた声に、直ぐに反応する事が出来なかった。
そんな巽に、待たせたから怒っていて、返事が無いのだと思った邑輝は、素直に謝罪した。

「待たせてしまってすみませんでした。さぁ、行きましょうか。」

ドアを開け、巽を車内へ招き入れる。

「ええ。」

その紳士然とした態度に、胸の鼓動が高鳴るーー。


‘ああ…、いよいよだ。’

覚悟を胸に秘めた巽と、まだ何も知らない邑輝を乗せた白いベンツが、滑る様に走り出して行った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ