闇の末裔
□これから…。
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‘ああ…、ドキドキします。’
これから一世一代の大勝負。
緊張して、口が乾く…。手が震えて…。
‘大丈夫、歯は磨いたし、シャワーも浴びた。下着も新しい物に変えた。それから…。’
「巽さん!」
思考中断させる、甘い深みのある独特の声。
邑輝一貴かの人だーー。
優雅な動作で、車から降りてくる。
姿を見てしまうと、掛けられた声に、直ぐに反応する事が出来なかった。
そんな巽に、待たせたから怒っていて、返事が無いのだと思った邑輝は、素直に謝罪した。
「待たせてしまってすみませんでした。さぁ、行きましょうか。」
ドアを開け、巽を車内へ招き入れる。
「ええ。」
その紳士然とした態度に、胸の鼓動が高鳴るーー。
‘ああ…、いよいよだ。’
覚悟を胸に秘めた巽と、まだ何も知らない邑輝を乗せた白いベンツが、滑る様に走り出して行った。