闇の末裔
□なにしてる なにしてる
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底冷えする様な寒い朝。
季節外れの暖かい日が続いていたのに、今朝は急に、例年並の寒さがやってきた。
通勤、通学で街行く人も、今日は手袋やマフラー、コートの襟を立てて歩いている人も多い。
先日に比べて、10度近く冷え込む今朝は、閻魔庁召喚課課長秘書である、巽征一郎とて、流石にコートのポケットに手を入れて、心なしか背を縮めて歩いていた。
‘身体が寒さに慣れる前に、急に寒くなりましたね。体調管理に気をつけなければ。’
そんな事を思いながら、息をホゥっと吐く。
暖かい息は、白い水蒸気となって、冷たい外気の中にスゥっと融けていった。
その変幻自在な様が、ある人物を想わせてーー。
‘貴方は今、なにしてる?’
少し躊躇したが、巽は意識を影に集中させるーー。
辺りはまだ薄暗い。
仄かに暖かい室内に、かの白き外科医は未だベッドの中で、お休み中だった。
‘ああ、そういえば一昨日から夜勤って言ってましたっけ。’
少し疲れが見える寝顔に、
‘どうぞ、ゆっくり休んでくださいね’
と心の中で声を掛け、意識を自分に戻した。