闇の末裔
□―白美神−ハクビシン―
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一戦交えた後の、程好い気だるさの中で、
此方に背中を向けて紫煙を吹かしている、その男の…。
滑らかな白い、黒子一つない背中を眺めながら、
ふと、思い付いた事を、そのまま口に出してしまっていた。
「ハクビシン…。」
「何ですか?」
男が怪訝そうな顔をして、聞いてきた。
「いえ…、貴方の為にあるような言葉だと…。」
男は、見上げてくる邪気のない青い瞳に微笑み掛けながら、答えた。
「私は、鳥獣ですか?」
「え…。」
「白鼻芯(ハクビシン)、ジャコウネコ科の獣です。」
言われた事の意味に気付き、『違う』と否定しようとして、やめた−−。
「同じようなモノでしょう!?咬むし、舐めるし、オイタはするし。」
照れ隠しのせいで、口調が強くなってしまった。
男は『そうですね』と笑って顔を近づけてきた。
応じるように、瞳を閉じる−−。
このまま眠りに落ちてしまうのが、もったいないと思わせる、甘い、口づけを受けながら、先ほどの言葉を思い浮かべた−−。
『白美神』
まるで、貴方の為にあるような言葉だと……。
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