闇の末裔

□Terrible Two
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しばらくすると、キッチンからいい匂いが漂ってきた。

「さぁ、出来ましたよ。ご飯にしましょう。」

その声に、自動車のおもちゃで遊んでいた二人は、遊びの手を止めた。


邑輝は、コーちゃんをチャイルドチェアに座らせ、
巽は、コーちゃんの分の食事を取り分ける。


「もう幼児食で大丈夫だと思いまして、今日は和食にしました。味、大丈夫だといいんですが…。」
何時もよりかなり薄味だったが、きちんとダシを取って作っているので、素材本来の味が活かされ美味しかった。


「美味しいですよ。貴方の作る物はなんでも。」

そう言って、箸を進める。普段あまり和食を食べない邑輝が、食べてくれるのが嬉しかった。



「うーー!」

「ハイハイ、さぁ、どうぞ。」

コーちゃんの食欲は凄まじく、用意していたものは全て平らげ、更にお代わりを平らげてもまだ要求してきた。
器用にスプーンを握って、口へ運ぶ。
半分以上こぼれているが、気にしない。

「こんなに食べさせていいのか…、ドクター解りますか?」

「小児医療は専門外なのでわかりませんが、心配ないと思いますよ。」

「ならいいんですが…。」

心配した巽だったが、邑輝がコーちゃんに、もうごちそうさましようね、と言い聞かせるのをみて、ほっとした。
二人にはお風呂に入ってもらって、その間に、巽はコーちゃんが汚した床の掃除と後片付けをする事にした。



「巽さん!コーちゃん、洗い終わりましたよ。受け取ってください。」

ちょうど、洗い物も終わって一段落着いた所だったので、
バスタオルを持って、脱衣場へ行く。

「はい、コーちゃんおいで!気持ち良かったね。」

バスタオルを広げて、濡れた体を拭こうとするも、くすぐったいのか、もがいて逃げようとする。

オムツを履かせようとした隙に逃げ出して、裸で走り回っている。

‘まぁ、寒くないからいいか’
と諦めてしまった。
巽が追いかけると、ますます喜んで逃げるw




「なにやら楽しんそうですね。」
と、お風呂から出てバスローブを羽織った邑輝がきた。


「邑輝さん、コーちゃんがオムツをなかなか履いてくれなくて、困ってるんです。」


どうしたらいいのか分からない、という巽の表情を見て、
「私がやっておきますから、貴方も入ってらっしゃい。」
と気遣いの言葉を掛けてくれた。


「じゃあ、お願いします。」
と言って、風呂場へ向かうと、
邑輝の‘オムツを履こうね’の声に、素直に従うコーちゃんを見て、幼児に振り回されてる自分が情けなく思い、上手に世話をする邑輝に嫉妬してしまった。
「なんか、自信がなくなってしまいます…。」


ぽつりと巽がもらした。
普段の巽からは想像出来ない言葉。



お風呂から出たコーちゃんを寝かしつけるまでに、パジャマを着せるのも、髪を拭くのも、歯磨きも、ベッドに寝かせるまで、全て邑輝がやった。
巽がやると全く言うことを聞かないコーちゃん。
ふざけて、逃げて。でも邑輝が言うと、ちゃんと従うのだ。


ベッドに突っ伏して、顔を見せようとしない恋人の、洗い上がりの更々の髪を撫でながら、

「違いますよ、巽さん。コーちゃんは貴方には甘えてるんです。」

「でも…。」

「お母さんと保母さんの違いです、例えが悪いですが。
心から貴方が好きだから甘えたいんですよ。」

「…。」

納得出来ないでいる巽の髪に口付けながら続ける。

「私の方こそ、貴方が甲斐甲斐しく世話をするのを見て妬けてしまいます。」

ガバッと身体を起こして、邑輝に言う。
「相手は子供です!」

巽の視線を受けながら微笑んで、
「例え子供だとしてもです。私は貴方が好きだから…。」


一気に全身を真っ赤に染めて、身体を硬くした巽の顎を取って、耳元で甘く囁く。

身体を奮わせた巽の、返事を待たずに、唇は綺麗な線の頚から鎖骨へ降りていく。
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