闇の末裔
□きっと、もっと、ずっと。
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それは突然、嵐の様な出来事だった。
巽は、赤子になった邑輝を連れて、上へあがってしまった。邑輝の本宅で、榊に助けられながら、赤子になった邑輝を育てていた。
それでも、ベビーシッターを雇い、律儀に出勤してくるところが、巽らしいと言えば巽らしかった。
榊は、邑輝がどんなに巽の事を、大切に想っていたかを知る、数少ない理解者だったので、巽が邑輝の世話をすることを歓迎していた。
巽の一日は、朝から赤子のオムツや着替え、ミルクなどの世話をし、シッターに預けて出勤。仕事から帰って、遅い夕食済まし。お風呂に入れて、歯磨きをして、寝かし付けるまで、怒濤のような時間が過ぎるーー。
それでも残された時間を思えば、辛いとは思わなかった。
***
休みの日には、召喚課の者もやって来た。
都筑は赤子の遊び相手をしてくれ、密は衣類や雑貨を用意し、亘理は自作の玩具を持って来てくれた。
皆、邑輝が、巽が、どんなに危うい関係の中で、お互い惹かれ合い、愛しんでいたか知っていたので、誰もが二人を助け見守ってくれた。
***
「一貴も、もう一歳か。赤子の成長ってホンマあっという間やなァ。」
休日のティータイム。
巽、お手製のパンケーキを食べながら、亘理がポツリともらした言葉に、巽も密も頷く。
視線を一貴に向けると、都筑にお馬さんになってもらい、遊んでもらってご満悦の様子。
都筑は、無邪気な赤子に髪の毛を引っ張られて、ほとほと困っている様子だった。
「いた〜い!、たつみ〜、助けてよ〜!」
都筑の泣きが入る。
「赤子の相手も出来ないのかよ、何年生きてるんだ!?」
「遊んでもらって嬉しいんや、邪険にしたらアカンで。」
「髪の毛を纏めた方がいいですね。」
皆、思い思いの事を言う。
項垂れる都筑と、甘える一貴の姿を見守りながら、このまま暖かい時間が過ぎて行くと、誰もが思っていたーー。