闇の末裔
□なにしてる なにしてる
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「た、つ、み〜!ゴハンだよ!」
昼休みを知らせる鐘の音と共に、召喚課一番の欠食児童がやって来た。
目当ては、巽お手製のお弁当。
毎日毎日、お昼ご飯にあやかろうと、やって来る都筑の為に、巽のお弁当箱はかなり大きい。
「巽、これなに?」
「ああ、それは残り物のご飯で作った、ライスコロッケです。」
「へぇ、美味しい!じゃ、これは?…」
喋りながらも、手を休める事は無く、どんどんお弁当の中身は、都筑の胃袋に収まっていくーー。
作った本人よりも多く食べているのは、いつもの事。
「ごちそうさまでした!」
と、あらかた平らげて満足したのか、口元を拭うと、今度は‘食後のコーヒー’をいただきに、亘理のラボへ姿を消した。
‘まるで、餌場を回る猫みたいですね’
と呆れつつ片付けをしていると、ふと、自分の料理を美味しいと言って、平らげた人物を思い出したーー。
‘貴方は今、なにしてる?’
邑輝は、書斎にいた。
オフホワイトのオーガニックコットンのシャツに、カシミヤのカーディガンというラフな恰好で、目線は医学書と、パソコンの画面を往復し、サイドテーブルの上に置かれたサンドウィッチとコーヒーを口に運びながら、凄い勢いで、キーボードを叩いている。
‘ああ、そういえば学会での論文発表が、近く合ったのだっけ’
巽は、休み時間の終わりを告げる鐘の音を聞きながら、意識を自分に戻したーー。
‘どうか、無理はしないでくださいね。’