闇の末裔
□なにしてる なにしてる
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パソコンの画面を見ていて、少し疲れを感じた巽は、眼鏡を片手で直すと、膝に掛けてあったブランケットを椅子の背に掛け、立ち上がった。
ちょっと息抜きに、外の空気を吸おうと、窓を開けた。
「!」
いきなり木枯らしが吹き込んできて、慌てて窓を締める。
午後の陽射しは暖かそうに見えたが、やはり風は冷たい。
ふぅ、と一息付くと、先ほど、同じようにパソコンを叩いていた人物を思い出す。
‘貴方は今、なにしてる?’
視ると邑輝は、背もたれに寄りかかって、眠っていた。
開いたままの本。
付いたままのパソコン。
どうやら、仕事中に眠ってしまったようだった。
巽の手が、ブランケットに延びたかと思うと、その場から姿を消したーー。
「ん…。」
しばらくして邑輝が眼を覚ますと、自分に掛けてあるブランケットに気が付いた。慣れ親しんだ匂いに、ある人物を思い出す。
その地上に居る筈のない人物に、まさかね、と疑問も浮かぶが、そんな疑問を払拭するかの様に、季節外れの桜の花びらが付いていた。
永遠に咲き続ける冥府の桜ーー。
桜の花が咲く、冥府の貴方を思う。
‘貴方は今、なにしてる?’