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□僕は君の足枷
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「小説家は、他の職業の人に比べて短命なんやて」
「なんだそりゃ」
 コーヒーを片手にテレビを見ていた私は、同じく隣に座る火村を見て言った。火村は少し呆れたようにテレビから視線をこちらに移す。
「動かんわりに神経ばっかし使うから、無理が生じるんやと」
「じゃあアリスは安心だな。脳天気さが取り柄だろう」
「何言うとんのや。俺かて苦労しとんのやぞ。人間関係も―――」
「良好じゃねぇか」
 言って、火村は触れるだけのキスをする。私は眉根を寄せて助教授の切長の目を見据えた。
 火村は肩をすくめてなだめるように私の肩を抱く。彼は冗談だと受け取っているのかもしれない。

―――それこそ冗談にならない。

 私は真剣なのだ。私が彼より早く死んでしまったら、誰が彼を止めるのだろう。
 彼を蝕む、闇にまみれた激情を、一体誰が抑え込むというのだろう。

「死ねへんなぁ」
「うん?」
「俺、火村より先に死ねへんわ」
「何を言ってるんだか、今更」
「火村んこと、俺が守ったるさかい」
「はいはい。よろしく頼むぜ、有栖川センセ」
 苦笑する火村の肩に頬をすり寄せて、私は小さく呟く。

―――ほんまやぞ、と。

ほとんどかすれてしまった呟きは、火村には聞こえなかったかもしれない。





―――Fin.




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