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□Sky is blue
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「あぁ、本当にあの兄弟には困ったもんだな」
 小さく呟き、つい先程まで『あちらの世界』と繋がっていた空を振り仰いだ。

 空は晴天。哀しいほどの、青色。


「大佐!」
 後方から近付いてくる呼び声と足音に、少しだけ顔を引き締めた。
「今の私は………」
「大佐。お怪我はありませんか?」
 放った言葉をすっかり無視し、かつての部下はおおよそ軍人には似合わない微笑で息をつく。
「ああ、ない」
 仕方なく頷き、まったく困った奴らばかりだな、と呟いた視線の先には見慣れた顔触れ。目を細めて肩をすくめると、片目の視界は更にせばまり微かにぼやけた。
「マスタング『伍長』、見事な指揮官っぷりでしたね」
 殊更に『伍長』を強調した噛み煙草は、横腹を同僚にぐりぐりやられている。そんな彼等に一瞥をくれてやって、私を誰だと思ってる、と口角を持ち上げた。
「私は大総統になる男だぞ」
 言えば途端に部下たちは吹き出し、けれども吹き出しながら敬礼をした。
「おかえりなさいませ、マスタング大佐」
 ただいま、などと云う言葉を紡ぐのはひどく擽ったい。けれどいま、限りなく安らかな気持ちでいるのもまた確か。
「町の修復がある。忙しくなるぞ」
 半ば照れ隠しで言い、発火布の手袋を填め直す。
 近くて遠い『世界』に行った友のことを、少しだけ考えた。


「伍長から大総統になるまで、どのくらいかかるっすかね」
「ふん。私が今ここにいる時点で、次の大総統は決まったようなものだ」


 空は晴天。透けるほどの、青色。
 天は焔の錬金術師に、祝福を与えている。




―――Fin.



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