S/W

□あなたはわたしひとりをおいて
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―――あなたに何をしてあげられただろう

わたしはあなたに感謝しています。それは今も変わらず、昔から変わらず、これからもおそらく変わることのない気持ちです。

あなたのあたたかい掌が馴染んだわたしの頭に雪が降りかかります。この雪の白がわたしの闇色の髪を銀に染めあげたらなんと素敵なことでしょう、―――まるであなたのソレと同じ混じりけのない銀に。

ああ、この世界はすべてすべて白いのです。わたしの肌も、吐息も、いま立つこの大地も、そして記憶の中のあなたでさえも。あなたほど白という色が似合う人はいませんね。これほど美しく儚く脆い色はないのですから。

あなたはわたしの黒ずんだ心を真っ白くきれいにしてくれました。わたしの犯した罪などはあなたのものに比べればそれこそとるにたらないものだったのでしょうけれど、それでもあなたは何一つ残さず取り除いてくれました。

あなたの行動がわたしを救っていたなどということをあなたはきっと知らなかったのでしょう。あるいは知っていてもずっと知らないふりをして。それでよかったのだと思います。わたしはあなたにこうして心から感謝しているのですから。そんなあなたにわたしは心から救われたのですから。

あなたがわたしの罪をひとつ取り除くごとにあなたの罪がひとつ増えることをわたしは知っていました。けれど何も言わず何も訊かなかったのは、それすらもあなたの望むところだったから。あなたの望みはせめて、そのままにしていたかったのです。

わたしはあなたをあいしています。

あなたは一体何処に行ってしまったのでしょう。おとぎ話のように星になって空からわたしを見守っているのでしょうか。そうであればいいです。だってわたしは、星が大好き。見上げない夜なんかないのです。だから、あなたが星になったのならわたしがあなたを忘れることもないのでしょう。あなたはまるで微笑むように淡く白い光でわたしを見つめているだけ…………。

そして雪が舞う今でもなお、わたしの天上では白い輝きが失われることはないのです。






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