S/W
□拝啓、―――
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拝啓、愛おしい君。旅立つ前に僕の話を聞いてください。
僕は昨日、遂にあの子に君のことを話しました。後悔はしません。いつかはきっと言おうと思っていたことなので。
直接会って伝えたかったのだけれど、僕は意気地無しなのできっと顔を見たらごまかしてしまう。だから、文明の利器の力を借りました。それでもすこし、冗談めかしてしまいましたけれども。
あの子が、あの人を好きだと知った時から既に君は僕の傍にいました。それは同時に、僕が、君とよく似た別の君を愛おしんでいた時でした。だからあの子は、罪深いと思うのです。僕が思うに、ですけど。
後悔はしません。ただひとつ確かなことは、君を喪わなくてはならないのだとしたら、僕はもう占いなど金輪際信じないでしょうということくらいです。あれらは僕に、―――君と僕とが永久に共に在るという―――ありもしない幸せの未来を想わせる悪魔の道具です。
伝える前は、愚かにもあの子が君を受け入れてくれるような気がしていたですけれども、メールの返信を待つ間に脳内を駆け巡るのは、どう贔屓目に捉えてもバッドエンドばかり。何と言うことでしょうね。
いつかは言うつもりでした、でもまさかいま、言ってしまうなんて誰が想像したでしょう。少なくとも一週間前の僕は思ってもみなかったことです。ああ、なんて愚かな。
さようなら、君。あの子が困らないように、僕は何もなかったように振る舞います。それが、あの子の為に出来る最善のことだと思うのです。そうでしょう?
そういうわけで、僕は僕の出来心で君を殺して仕舞うことにしました。後悔はしていません。ただ寂しく、ゆるやかな絶望を抱いているばかりです。
さようなら、君。
君と過ごした日々はまさしく輝いていました。
―――Dear my ゙LOVE".