Kanon

□約束
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「祐一……」

 横から服の袖を引っ張られて足を止める。

「どうした?舞」
「…お腹すいた……」

 舞はそう言って顔を赤くして伏せた。

「……昼は食べなかったのか?」

 こくんとうなずく。

「犬さんがいて、おなかすかせてたから…」
「あげたのか?」

 こくん…

 はぁ…まぁ仕方ないか…動物好きだもんな。舞は…

 …あれ?

「佐祐理さんは居なかったのか?」

 今日は俺は一緒に食べられなかったから、
 てっきり舞は佐祐理さんと二人で食べてるのかと思ったんだけど…

「もしかして…喧嘩でもしたのか…?」

 俺の質問に舞は首を横にふった。

「ぽんぽこたぬきさん…佐祐理は今日学校休んでた」

 分からない人のために説明しておこう。

 舞には肯定のときははちみつくまさん。

 否定のときはぽんぽこたぬきさんと言う様に言ってある。

 何故かは、まぁ…昔、いろいろあったからだ。

「そっか…」

 風邪でも引いたんだろうか…、そんな心配をしていると、
 俺の気持ちを悟ったのか

「家の用事があるっていってた…」

 そういって足を止めた。

「ん?どうした?」
「……祐一、忘れてる……」
「?…何を……?」

 ジーッと恨みがましい目で見られる。

「うっ…」

 思わずたじろいだ。

 な、なんだ?俺は、何を忘れてるんだ?!

「……パフェ…」

 俺が思い出せないのを見かねたのか舞は助け舟を出してくれた。

「パフェ………あっ!」

 そうだった。

 前に舞とした約束。

 パフェを奢ってやるという約束……何でしたんだっけ?

 理由が思い出せない…ま、いっか。

 どうせ舞も覚えてないだろうし…

「祐一…今すごく失礼なこと考えてた……」
「か、考えてないって…」

 す、鋭い…

「それよりさ、早く行こうぜ」

 俺は舞の手を引いた。

「うん……」


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