Kanon

□その一言を君に
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「あの〜…」

 商店街。

 人で賑わう中、後ろから声をかけられ足を止めた。 

 なんだ?セールスの勧誘か?

 にしちゃあ声が小さいし積極性もない。

「すいませ〜ん…」

 どうする?俺。

 このまま無視して立ち去るか。

 しかし、相手は困っている可能性もある。

 まぁ、俺もこの後、特に用事があるわけでもないし、困っている奴を見捨てるほど心が狭いわけでもない。

 しかし、面倒ごとを抱え込むというのも…

「うーっ…無視するなぁ!!」
「どわ!!」

 腕を組んで考えていると後ろからの衝撃で吹っ飛ばされた。

 顔面から地面に突っ込む。

 何だ今のは?!ドロップキックか?!


「何すんだコノヤロウ!…っ?!」

 勢いよく顔を起こした俺は目を見開いた。

「アンタが無視するから悪いんでしょうが!!」
「…真琴…!」
「え…?」


 沢渡真琴が立っていたのだ。


「誰?それ。私の名前なの?」
「あ、あぁ。いや、悪い…知り合いに似てたから…」

 アイツがここにいる訳ないのに…

 …ってちょっと待て。

 コイツは今なんていった?

『私の名前なの?』そう言わなかったか?

「お前もしかして記憶がないのか?」
「そーだよっ。記憶喪失って奴ね。ちょっとカッコイイでしょ」

 そういってそいつは笑った。




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