夢小説:短編2

□炭酸水に溶けた夏
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は何処へってしまったのだろうか



縁側で買ったばかりのサイダーを口に含む

まだ始まったばかりの夏休みという箱に、僕達は入っている

五月蝿い蝉の声。ゆっくり動く雲。頬をつたい、顎から落ちる汗。

蒸したように暑い気温はいかにも夏という感じだった


「あーあ。終わった」


消えてしまいたいと思う

私は縁側に背中を預けるように、寝転がった

サイダーを横に置きながら


本当にわってしまった


失恋なんて今回が初めてという訳ではない

思い起こせば何度だってあるんだ

只今回は自分から告白して撃沈したというパターンで

しかもその相手が幼馴染みで毎日のように遊んでいた相手なら

夏休みという遊びにはもってこいの時期に、ギクシャクした関係なんてなりたくない

嗚呼私の馬鹿

友達の罰ゲームなんてくだらないもの、素直に受けるんじゃなかった!!

後悔なんてする柄じゃないけれど、今回は本気で悔やむ

本気で好きで、やっとできた告白がこんな時期に撃沈するなんて!


「泣ける」


ぐすんと鼻を鳴らす

これから夏休みの間にどんな事があるだろうか

地元の祭り、花火大会、キャンプ

どれもこれも親友の巫ちゃんと一緒に企画して全員でやるはずだったのに…!

よりにもよってあいつは全部来るんだ(だって生徒会長だし…)

相手はどうかしらないけれど、少なくとも私はきまずい

行っても楽しめるわけないさ!


「こんな状態!もう夏が終わったとしかいいようがないよ!!」

「何処をどう見てだ?」



「!?!?」



ぎゅっと瞑った目をいきおいよく開く



「も、ももももも!!!元就!!!!」



いうのが早かったか遅かったか、私は飛び上がるように体を起こした

そんな私を見て呆れたような表情を浮かべるのは毛利元就

私の幼馴染みで、つい最近私を振った相手だ


!やばい!そう思うと顔が上手く笑えない!


「その間抜けな顔をやめろ。暑苦しい」

「な、なんで?此処私の家…」

「おばさんに入れてもらったのだ」


にこりと微笑んだ元就。この爽やか(?)な笑みで私の母を騙しているのだ(なんてやつだ)

と、いうか母さん。せめて呼んで下さいよ…


「久しぶりだな」


元就は小さく零した


「うん。会ったのは……夏休み入る一日前だったからね」


それから五日くらいたってるよねーと笑うと元就はハっと鼻を鳴らした

ん?


「貴様が我に告白してきてからだ、な」




墓穴掘ったぁあああ!!!

あまりの元就のいつも通りの口調に、私は少し忘れかけていた

(忘れるの早いな私!!)

元就を見ると何やら勝ち誇ったような、自慢するような笑みを浮かべている(むかつくなこの顔)

(見下ろされているから余計、かもしれない)

私は言葉を何かかえそうとするが、あまりに自分が墓穴を堀りすぎたのでなんともいえない

(私の心にだけ)微妙な空気が漂う



「あの貴様が我の事が好きだったとはな」

「あ、あれはた、只の罰ゲームであって…」

「あの時の顔の赤らめようは凄かったな」

「う、五月蝿い!!」


口元をいやらしいくらい曲げる元就(その笑みも凄くかっこいい)(どうしたんだ私の目)

私は短い腕を伸ばして元就の足を叩こうとするが元就はまるで何もなかったように、

涼しい顔でよけていく

二回くらい振ってから諦めた私は、はぁっと溜息をついて、置いてあったサイダーを手に取り

口に含んだ

それとほぼ同時に元就も縁側に座る(私の横ですよ)












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