夢小説:短編2

□垣根見た夢
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                    一瞬の夢を見た





「見た所…女中……という所かな」

「……」


前を見る私の頬にあたる冷たい感覚

その正体は一本の刀の刃

そしてジロジロと私を眺めるのは声からしてまだ若い男の人だ

何処の人だろうか…こんなに特徴のある声なら居たら気付くはずなのに

相手の顔を見ようとしても、男の人は私が動く事を許さないように気をはっている

そのせいで私は動くに動けないのだ

………どうしてだろう。動こうという気もない


私に刀を向ける男は私に優しく問いかけた


「織田軍の者かい…?それとも明智軍…?」

「答えるんだ」


何故かその時私は酷く落ち着いて居た

男の人の声は優しくとも、体へかかる重圧感はまだ取れていない

にしてもこの男の人の問い……まるで織田軍でも明智軍でもないような……

否…自分の軍を明かさずに、相手の軍を知る為だろうか…?


「刀………刀を退けて下さい…」


少し発言に抵抗を持ちながらも、私は男の人に言った

すると思ったよりも男の人はあっさりと刀を頬から退けてくれた

私はその瞬間素早く後ろへと振り向く


「!」

「動くな」


私は驚いた

もちろん。先程退けてくれた刀が目の前に突き付けられて居た事にも驚いたが

それよりももっと、刀を向けるあの男の姿に驚いた

見開かれた自分の目に写るのは、思った以上に若い青年だ

その青年は、白く癖のある髪の下から覗くのは、髪と同様に異常に白い肌

その肌を持つ顔を隠すのは、つけられた見た事の無い紫の仮面だ

こんなにも特徴のある顔を私は織田軍でも明智軍でも見た事がない

私はゴクリと息を飲んだ


「貴方は…」

「僕の名なんて聞く必要はないだろう。僕は聞きたいのは君の軍に名さ」


冷たく棘のある声に私は聞こうとしていた事をつい喉の奥に隠してしまった

その代わり私は彼の質問に、答えた


「明智軍の者です」

「……明智君の軍か…彼はとても役に立ってくれたよ」


そう細く微笑む彼

役に立ってくれた…?明智様が…?何の…?


「あ、明智様に何かしたんですか?!」

「した訳ではないよ。只ポロリと言っただけさ」



今謀反を起こしたら



織田信長の顔はどうなるだろうね、と





        一瞬、目の前に火花が散った




ガキィインッ












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