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□俺とエロ本と修羅場
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「ねぇ白竜、これなあに?」
部屋に帰った俺を待ち受けていたのは満面の真っ黒い笑みを浮かべた彼女と成人向け雑誌――俗に言うエロ本ってやつでした。

孤島に居るからってそういうモノに興味を持たないと思ったら大間違いだ。殆ど男しかいないような場所なのだからむしろ興味は湧いていく一方。だから俺たちにはこうしてたまにこっそりと、こういうものを黒い袋に入れて回し読みしたりする。要するに思春期の少年には当たり前の事なんだぜと開き直って見れば、すごい勢いで顔面を殴られそうになったのでとっさに避けた。
「……っぶねーな、なにしやがる」
「うるさい色情魔変態本当最低ちょっとアナル出してよ掘ってやるから」
「何が悲しくて付き合ってる女に掘られなきゃならねーんだ!」
「付き合ってる?馬鹿も休み休み言え今日からお前はボクの下僕だそのエロ本に感謝しろよさあケツ出せ」
やばい、目がマジだ。この状態のこいつなら遣りかねない。
ところが少し距離を置こうと退いてみても何もして来ない。その代わりふう、と小さな溜め息が聞こえてきた。
「だってさ、彼女いるのにエロ本なんて読む?フツー……」
そんな独り言を聞いて、俺は一つの可能性に行き着く。
「お前……まさかそれに嫉妬してるのか?」
途端、茹で蛸みたいにシュウの顔が赤く染まる。図星か。
「だって、彼女がいたらフツー彼女とのセックスを想像しながら抜くもんだろ!?確かにボクは胸だってなければこの本の女の子たちみたいに可愛くもないけど、は……白竜なら、ボクのことすきって言ってくれたし、胸ないのも我慢してくれるかなって思ってたのに結局大きい胸がいいのかよ!」
俺の名前を呼ぶよりも恥ずかしい単語が多々あったような気がするのに何故そこではどもらないんだとか非常にどうでもいいことを考えながら、あまりにも可愛い事を言うシュウに疑問をぶつけてみる。
「……お前、自分が抜きネタに使われても何にも思わないのか?」
「ヤリマンみたいな言い方すんの止めてくれないかな。教官とかチームメイトになら思うところはあるけど、白竜はボクのすきな人だから……むしろ嬉しいっていうか、その」
日に焼けた小さな手が俺の手を掴み、そっと柔らかな双丘の片方に置いた。
「分かる?心臓すごいどきどきしてるの」
心臓もそうだがシュウの甘えた声や柔らかな胸に気をとられてしまう。小さくてもやはり柔らかいものは柔らかいらしい。
「柔らかい……」
「でしょ?女の子だもん。ねぇ白竜、エロ本とどっちがいいの?」
今更か。つーかじっと見つめてくるこんな奴見てたら答えは一択しかないだろ。
「……お前で」
これで満足だろ、と酷く疲れて垂れてた頭をあげると、そこには安堵したシュウの姿があった。
「よかったぁ……あそこまでやるのスッゴい緊張してたんだからね」
「シュウ……悪かった」
「あはは、今回だけは許してあげる」
はにかむシュウがひどく可愛らしくて、俺はそんなシュウを抱きしめようと小さく手を伸ばす。

「じゃあ、罰としてホワイトブレスでこの本見られないレベルにして」

「え」
ぴたり、と延ばしかけていた手が止まる。
「だってこの本があったらまた読んじゃうじゃない。それにボクこんな本もう二度と見たくないし」
「いやだからさっきも言ったがこれ回し読みしてたやつで俺がやったらきっと大バッシング食らうんだけど」
「んっ?」
まるで化身でも出すんじゃないかと言うくらいにどす黒いオーラを纏いながら天使のような微笑みを浮かべるシュウを見て思ったことはただ一つ。


――こいつ、正真正銘の鬼だ。


数日後、チームメイトに経緯を話した俺が予想通り大バッシングを食らった挙げ句「制裁」と称して全身に化身技を受けたのはまた別の話である。

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