long novel

□smooch!
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注意!女体のバカエロです。土沖以外に、攘夷志士×沖田・神山×沖田・ハタ×沖田のエロ有りです。


触れたら消えてしまうなんて、そんな風に思っていたわけじゃない。
ただ目の前にある現実を受け入れられず、ただぽかりと口を開いてしまった。すると間髪入れずにぱしゃり、と携帯電話のカメラで撮られる。「まぬけなかおー」そう言った声はいつもよりも甲高くて、でも女にしては低かった。
土方は慌てて開きっぱなしの扉を閉めると、沖田の殺風景な部屋の中で所在無さげにして立つ山崎を軽く無視して、寝巻き姿のまま布団の上で乙女座りをする沖田の両肩をがっしりと掴んだ。華奢で、今にも折れてしまいそうで、沖田は片目を歪めて「いたい」と口を尖らせた。


「…どうゆう事だ。」
「どうゆうもこうゆうもありやせん。こっちが聞きてェぐらいだ。」


ふん、と顔をそらすと肩まである細い髪の毛がつられて揺れた。なんだこれは、肩に置いた手にもかかる、柔らかい髪の毛を凝視する。すると「きもちわるい」と相変わらず可愛げのない返事が戻ってくる。
早朝から山崎に叩き起こされて来てみれば、間違いなく見ればすぐにわかる。沖田が女になっていると。丸みを帯びた線とか、寝巻きの上からでもわかるふくよかな胸とか、さらりと靡く栗色の髪の毛は変わらずストレート。なのに当の本人は変わらないポーカーフェイスで、山崎の方が真っ青な顔をしている。土方は沖田を掴んだまま山崎の名を低く呼んだ。隅っこにいた彼は可哀想な事に、ぎくりと体を震わせた。
新人隊士の早朝稽古の為に沖田を起こしにきただけだというのに、これではあきらかに被害者である。


「お前の仕業かこれは…。」
「そそそそんなわけないでしょうがっっ!俺が来た時にはこうなってましたよ!」
「俺も起きた時には女になってましたぜ。ちゅーわけで土方さん。」
「…あ?」


沖田は一瞬真面目な顔をして、更に大きくなったんじゃないかと思わせる丸い瞳で土方を直視した。そして肩に置いた手をべりっと剥がす。まるで触るなと警戒しているように、しっしっと払うように手の平で邪険にする。


「早朝稽古は頼みましたぜ。」
「……俺二時間しか寝てねぇんだけど……。」
「山崎は俺に飯と近藤さん連れてこい。こんな格好で歩きまわるわけにもいかねぇだろ。」
「は、はい!わかりました!」
「ちょっお前は俺の直属の…。」


部下だろうがぁぁぁっと言い終える前に、山崎は小走りに駆け出していった。
何であいつはいつも沖田の言う事ばかり聞くんだよ、そう思いながら払われた自分の手を摩った。一応恋人同士という関係上なのに、こんな扱い酷過ぎるんじゃいだろうか。そんな土方の思いを知ってか知らずか、沖田はにっこりと微笑んで「いってらっしゃい」を言った。今日で一番いい笑顔だ。



早朝稽古を終えた土方は、食堂でマヨネーズパンを貰うとそれを持ちながら沖田の部屋へ急いだ。すると間に合ったようで、近藤と沖田が膝を突き合わせて朝食をとっている真っ最中であった。近藤は動揺の気配もないまま「おかえり」と箸を持ったままの手で手招きをした。
よく見ると土方の分の朝食も並んでいた。まだ味噌汁が湯気をたてていたので、新人へ早朝稽古の指示を出していた山崎が終わるや否や用意をしてくれたのだろう。土方は遠慮なく頂く事にした。秋刀魚と漬物にマヨネーズをかけて残った肉じゃがにもかけようとすると沖田の手に止められた。とても嫌そうな顔をして。


「食堂のおばちゃんに失礼ですぜ。」
「そうだぞトシ。味が薄いって言ってるようなものだ。それにコレステロールとかでお前そろそろ太るんじゃないか。」
「てゆうかもう太ってんじゃないですかィ。副長がデブなんて嫌ですぜ。」
「あーもうわかったよ、かけなきゃいいんだろ。」


赤いキャップを丁寧に閉めて胸元に仕舞う。それと同時に襖を遠慮がちに開く山崎が「お茶を持ってきました」と控えめに言った。「おお入れ入れ」と笑う近藤に、なんだか土方と山崎の方がイレギュラーな反応のような気がして顔を見合わせた。だって起きたら性別変わってたなんて!漫画じゃありがちだけどもさ!


「それよりも原因はわかったのか?」
「ああそういえば、その話をしてたんだった。心当たりあるのか、総悟?」
「んーいやぁ、別になぁ…。」
「とりあえず昨日何やったか一通り話してみろ。」
「えーと、昨日は起きて食堂でマヨ丼食わされそうになったから朝食抜きになりやして(いやお前がちょっかいかけてきてご飯食べる時間ねぇとか言うから俺のマヨ丼やろうとしたら投げやがっただけじゃねぇか!)仕方ねぇから見回り一段落着いてから団子屋にいって、座敷通して貰えたから昼寝して、起きたら旦那がいたなぁ。して旦那とファミレス行ったらチャイナに見つかって喧嘩になって、夕飯だからって逃げられたからそのまま帰ってきて、土方さんにちょっかいだして呪って呪って、土方さんに罠はって…。」
「あーわかったわかった。その先はよく知ってるから。」
「うーん、それじゃあ特に原因はなさそうだな。それにしても万事屋とそこまで仲良かったのか。」
「甘味仲間でさァ。あ、そういえば。
変なバカ皇子が「余のペットにしたい」とか言いだして「でも髪が長い方が好みだのぅ」とかぶつぶつ言いながらポッキンアイスくれたんで飲んだなァ。アイスなのに液体で温くて不味かったから、そいつの顔に投げつけたけど。」
「「それだぁぁぁ!」」


あからさまに原因わかってんじゃねーかァァと怒鳴りながら剣を抜こうとする土方を、山崎は全力で止めている。近藤はと言うと「すぐ忘れるなんてお前は本当に鳥頭だなぁ。」まぁそんな所が可愛いんだけど、ともいいたげにでれでれと笑っている。何故、こんなに近藤が動揺していないのかがわかった。
ただ単純に娘ができた父親の気持ちになっているのだ。だって沖田の小さい頃からよく知っていて最近は可愛げのなくなったものの、小さい頃は「近藤さん近藤さん」と雛の様にくっついて回ったものだ。そんな時の沖田を思い出しているのだろう。頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でる近藤に、沖田は少しだけ恥ずかしそうに肩を竦めた。
それが気に入らなくて、山崎にやつ当たる。
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