●歪みの国のアリス●

□scramble
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ここはいつかの廃ビル。
ビルさんにお呼ばれして、夕食をご馳走になりに猫と一緒にやってきた。





「ビルさんってモテるタイプよね♪」

「そうですか?」

私はビルさんがシチューをテーブルに運んでくる姿を見ながらテーブルについて、ふと思った事を口にした。

斜め前に座っている猫は無言でビルを見る(目が隠れてるのに見えてるのかしら?)

「うん!だってクールで無口だけど、レディーファーストだし、料理は上手いし」

「アリスにそう言ってもらえるなんて光栄ですね」

「だって本当の事でしょ?それにビルさんは私をチヤホヤしないわ。ちゃんと私を1人の人間として接してくれるじゃない」

ビルは私の分のシチューを更によそってくれる。
独特の香りが鼻をくすぐって、食欲をそそらせた。

「私も皆と同じ様にアリスを大切に思ってますよ」

「皆は…そう、オーバーなのよ、いろいろ。その点ビルさんは落ち着いてるし、ね」

「…そうかもしれませんね」
両端がつり上がった口を更につり上げる。
微笑んでいるようだ。

ついだシチューを私の前にそっと置く。
このお肉…何の肉なのかなぁ?
結局聞きそびれている。








「アリス」




さっきから私とビルさんの話を黙って聞いていたチェシャ猫が言葉を発した。


「え?何?」

シチューから目を離して猫を見る。
いつものニンマリ顔で、何を考えているのかさっぱり判らない。




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