過
□涙雨の向う側。
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あの涙雨の向う側には、
一体
何があるのだろうか。
『涙雨の向う側。』
「……うわ…」
学校の帰り道、オレは思わず顔を歪めた。
「降ってきちゃった…」
今日は朝からずっと。
灰色の、今にも泣き出しそうな空が遠くまで広がっていたのだが、それがついに泣き出した。
「もう…傘、持ってくればよかったよ…」
今朝家を出る時、母さんが「今日は雨が降るから、傘持って行きなさいね」と言っていたのに。
遅刻するかしないかの瀬戸際、傘なんかに構っていられなかったのだ。
今日は山本も獄寺君もいないから、傘に入れてもらうことも出来ない。
…いつもは、二人とも一緒に帰るのだが、今日は山本が…勉強を教えてほしいと、嫌がる獄寺君を半ば無理矢理図書館に連れて行った。
獄寺君に「10代目も一緒に行きませんか」と誘われたけど、オレはいいやと断った。
だって…せっかく、山本は獄寺君を(半ば無理矢理だけど)連れ出せたのだ。
オレにだって、それくらい分かる。
あの二人が、お互いに…仲間とか友達とかじゃない、何か別の…特別な感情を抱き合っていることは、少し前から気付いていた。
…ただ、獄寺君はまだ無自覚みたいだけれど。
オレは、二人が想い合っているのなら、それでいいと思う。
それがたとえ同性とか…そんなものは関係なくて。
好きならば。
二人とも、オレの大切な…
「ファミリ-」…家族も同然な、オレの「仲間」だから。
幸せであってほしい。
だから、応援したい。
そう思うのだ。
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