dreamD
□揺れる
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携帯がなってる。
「とったら?」
って村上くんが言う。
「うん」
って私は頷いて震える携帯を手に取る。
でも。
どうしても。
通話ボタンを押すことが、できない。
「どうしたの?」
村上くんが言う。
不思議そうな顔で。
私をまっすぐに見つめる。
彼はきっと知っている。
私と…
池田くんのこと。
「とりなよ。」
穏やかな口調の。
その一言が私の胸につきささる。
村上くんの瞳の中でなにかが揺らいでる。
ー僕じゃなくて、池田のとこ、行きなよ。
ーでも君は行かないよ、君は僕のものだから。
ふたつのセリフが重なって聞こえる。
そうしたいのか。
そうしたくないのか。
わからなくて私は。
震える携帯をなだめるように、手の中でぎゅっと握り締める…。