朧月夜。の置き場


□11.
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「お願い、とは?」

「星野だけじゃなくて、僕たちも?」



なんだなんだ、とおだんごの次の言葉に注目する俺達。


「あの、歌を・・・、皆さんの歌を聴かせて下さいませんか?」


なんだ、そんなこと?
言いにくそうに言うおだんごのお願いは、とても可愛らしいもので、ちょっと構えて聞いていたのに拍子抜けしてしまった。


「いいぜ、いくらでも。」

俺の了承の言葉に、大気も頷き、夜天はやれやれと歌う準備をする。


「ストーーーーップ!!」


その場でそのまま歌おうとすると、火野が慌てて止めに入る。

なんだよ。と言う前に、愛野が続いてくる。


「そうよぉ!ここで生歌聞くのもちょーカッコイイと思うけど!
折角なんだから歌う機能が備わったところに行きませんか?」

「美奈子ちゃん、それって・・・。」

「カラオケってこと?」


愛野の言葉に、木野と水野がカラオケか?と聞くと、愛野も火野も、ピンポーン!とウキウキしながら言ってくる。


おいおい、カラオケなんて、行ったことねーぞぉ。

俺は行ったことないカラオケという物に拒否反応を示していると、大気と夜天も同様のようで、行きたくない、と顔に書く。


「大丈夫ですよー!健全な場所ですし、個室だし!」

「そーそー!見付かりにくいとは思いますよ?」


愛野、火野はお構いなしにカラオケに行こう!と口説いてくる。
ここもスタジオ兼ねてるから防音だし、何だったら楽器弾こうか?とか色々言おうかと思ったが、
きっと、彼女たちはカラオケに行くことに熱意を込めて説得してくるだろうと思い、諦めた。



「・・・まあ、」

「しょーがない……」

「ーーーですね。」


俺も夜天も大気も、彼女たちには逆らえるわけもなく、こちらが折れるのは始めっから分かってた話だしな。


おだんごはそんな俺たちの様子を、目をぱちくりさせながら見ていた。


「で、どこのに行くんだよ。知ってるとこあるんだろ?」

「もちろーん!」

「任せてください、ホーホホホホっ」


「レイちゃん……。」

「美奈子ちゃんもすごい……。」



愛野と火野のパワーに圧されて、俺たちはカラオケに向かうために準備をする。


「車は?」

「全員乗れねーし、歩きだな。近いのか?」


手っ取り早く車で行きたそうな夜天だったが、どう考えても全員乗れねーし、無理だろ。
でもまあ、あんまり歩きたくない気持ちも分かるので、場所を確認する。

「ちょっと、電車に乗って歩いたところには乗りますけど。」


「えー、僕電車嫌なんだけど。」

「もう、今更文句言わないでください、夜天。」


愛野の返答にぶぅ垂れてる夜天。
大気が諦めろ、と諭して嫌そうに顔隠しのサングラスをしてた。

往生際の悪いやつめ。



彼女たちも持ってきていた荷物を持ち、おだんごや俺たちも準備が出来たので、揃って玄関に向かい、家を出ようとする。

いつもは広い玄関も、流石にこの人数だと窮屈だな。


靴を履く順番待ちをしていると、おだんごが

「なんだか・・・、少し大袈裟になってしまったようで申し訳ありません。」


と、言ってきたので、
「まあ、俺の美声をたっぷり聴かせてやるよ。」
と、キザに返しておいた。


俺の言葉に、いつもなら反発がくるが、
おだんごの反応は、嬉しそうにされてしまい、ちょっと調子が狂うな、と俺も言ったことに照れてしまった。


「何ぼーっとしての、星野。早くしてよ。」


夜天が急かすので、俺とおだんごも急いで靴を履く。
俺たちで最後で無人になった室内。

閉まっていくオートロックの扉を背にして、俺たちはカラオケに向かった。






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