朧月夜。の置き場


□08.
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帰って来るのは二人同時で、
「駐車場で会った。」と軽い感じで答えたが、

送りに行って、一時間も帰らなかった二人を見て、
星野は絶対にわざとだ……!と思いながらも、
何だかんだで二人の時間が嬉しかったので、何も言わないでいた。





「さーってと、月野、先に風呂に入っちゃえよ。
後より先のがいいだろ?」


「そうですね。
私たち、普段はシャワーだけなので遠慮しないで入っちゃって下さい。
あ、お湯溜めますか?」



子どもはとっくに寝ている時間になっていて、
夜天も眠たそうに目を擦りながら、
それでも女性を先に、
と紳士的な所をみせて、風呂を勧める。

大気もレディーファーストですから、と、
風呂に入れるようにと準備をしてくれている。


「あ、私もシャワーだけで大丈夫です。
……宜しいんでしょうか?」


「気にすんな。今日は色々疲れただろ?
先に入って早く休めよ。」



星野の微笑みながらの言葉に促されて、
遠慮がちに「じゃあ、お先に失礼します。」とだけ言い残し、
入る為の準備をしにいく。



「あ、シャンプーとかは買ったから大丈夫だよな?
お湯の出し方とかは大丈夫か?」


心配そうに風呂の使い方を説明していく星野。




その姿に「過保護だなあ。」と
大気と夜天は微笑みながら見ていた。



粗方の説明を終え、リビングに戻ってきた星野を、
二人はニヤニヤとからかう様な視線を向けて迎えた。





「んだよっ!」



二人が何を考えているかを悟って、
星野は悪態をつきながら顔を紅くする。



「別に〜。星野ってさ、絶対娘が出来たら過保護で子煩悩に世話しそうだよねー。
うちの娘はどこにも嫁にはやらん!とか言ってさ。」



「……ぷっ、確かに。」



「んだよっ、二人して!
俺をからかうのがそんなに楽しいのかっ」


「星野がいちいち反応するからだよ。
まったく子どもなんだからな〜。」


「んだとーっ!」




「星野、夜天も。
月野さんに聞こえますよ。」


ヒートアップしていく二人に溜め息を突きながら、宥める大気。



その言葉に一時は治まった二人だったが、

その後も隙を見てはからかう夜天、
それに反抗する星野、


そしてまた宥める大気、と




クイーンが風呂から上がってくる20分程の間に、


何度も同じ様な攻防を続けていった。





「遅くなってすみません。
シャワー、ありがとうございました。」


がチャリと風呂を終え入ってきたクイーンが入ってきた瞬間、

騒がしかったリビングは一瞬で静寂に包まれた。



その光景にクイーンははてなを浮かべながらも、
余り深く関わらないでおこう、と国を治める者の管理能力か何かで順応していく。




「月野さん、おかえりなさい。
もっとゆっくりしてきて下さっても良かったのに。

さ、星野。あなたもさっさと入っちゃって下さい。」


いち早くに大気がフォローに回り、
湯上がり状態のクイーンを迎え入れる。

そして次に入るなら星野が妥当だと思い、どさくさに紛れて指名する。


「ちえ、わーったよ。」



夜天に最後の攻撃とばかりに悪態をつき、
自室に戻って準備をしていく。


「夜天も眠くて機嫌が悪いのでしたらシャワーブースの方で入ってしまいなさい。」



夜天は大気の言葉にふん、とだけ言って、自室に戻った。
恐らく風呂の準備をするのだろう。


二人をあしらい、大気はふぅ、と肩を落とす。




「自分が入った後に男性が、というのも生理的に嫌でしょうから、
私と夜天はサブで付いているシャワーブースで済ませちゃいますから。
星野くらいは大丈夫ですか?」


「そんな……、気を使わないで下さい。」


大気の気遣いに、クイーンは申し訳なさそうにしながらも、
確かにさっき入った際、
後から誰かが入るから、と念入りに髪などを落としたままにしていないか
チェックして上がってきた事を思い出す。



「じゃあ、私がそちらに入って、皆さんはいつもの所を使ってくだされば良かったのに……。」



やはり気にはしたのだろう、とクイーンの様子で感じ取った大気は、
ふっ、と一笑してしまった後に、言葉を続ける。



「シャワーブースは狭くてゆっくりとは出来ませんからね。
それに普段は余り使用していない場所なので、掃除も行き届いてはいないんです。」


大気は女性には使用させられませんよ、と言って少し申し訳なさそうに笑う。



そうこうしていると、
カラスの行水並の早さで上がってきた夜天が、

「次、入りなよ。」と急かしにリビングの扉だけを開けて言う。
それだけ言ってしまうと、半乾きの髪をゴシゴシタオルで拭きながら、
さっさと自室へ戻っていった。


大気はその言葉に「はいはい。」と相槌を打ち、
ドライヤーの場所をクイーンに説明してから、
風呂の用意の為に自室に戻っていった。





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