朧月夜。の置き場


□08.
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「はあ〜…、って、あれ?大気と夜天は?」


夜天と同じ様な仕草で、
髪をゴシゴシと拭きながら現れた星野は、

まだ拭ききれていない水気をポタポタと垂らしながら、


きょろきょろと仲間達を探す。




「無駄に長く入っちまったしなー。部屋に戻ったのか?」


次に入るよう急かす為か、星野は彼等を捜しに入ってきたみちを引き返そうとする。



「あ、夜天くんはもうシャワーブースで先に入ってしまわれて、
大気さんも今続けて入られてるみたいです……。」



クイーンの言葉に、出ていこうと方向を換えていたが踵を返して戻ってくる。

シャワーブース、と言われた言葉に、
疑問を持っている様だった。



「へ〜…?あの狭いシャワー室で?」


「・・・は、はい。私に気を遣って下さったみたいで……。」



「……?
っ!あ〜〜……。」


星野も理由に心当たりがあるらしく、
さしてそれ以上は疑問を持たずに流していた。



「それよりおだんご、髪を乾かさなくて大丈夫か?」


風邪引くぞ?と手に持ってきていたドライヤーを差し出してくる星野。

クイーンはそれをおずおずと受け取る。
が、少し考えてから星野へと返そうとする。



「私は髪長いので、時間が掛かってしまいますから、
先に使って下さい。」


さっと星野の前にドライヤーを差し出すが、星野はそれを受け取ろうとはしない。



「いいよ。俺、いっつも使わず自然乾燥で済ましちまってるから。」

だから、気にせず使え、と星野は差し出されていたそれを受け取って、近くのコンセントに差してやる。



「……本当に?」


「ああ、ドライヤー使うのなんて、大気ぐれーじゃねーの?
夜天が使ってるのも見たことねーよ。」



男の子って、そんなものなのかしら…?とクイーンは納得はしていないものの、

長くて時間が掛かってしまう自分の髪を乾かすのに早く出来るに越したことはないと、

その言葉を信じ、
コンセントに差されたままのドライヤーを受け取って、
順番にゴーっと騒音付きの風を浴びせていった。



星野はその様子に満足したらしく、
風呂上がりの飲み物を求めてキッチンへと向かう。



コップに満タンに入れた牛乳を飲み干して、
使ったコップを洗ってから戻ると、
まだまだ先が長そうに、クイーンが髪を乾かしていた。



星野はふと思い立って、また洗面所へと戻る。

そうしてリビングに再び戻ってきた際に手にしていたのは、
使っていない古い方のドライヤー。


星野はそれをコンセントに差し込んで、
壊れていないか確認すると、

「2個でやっちまうほうが早いだろ?」

と反対側から、クイーンの髪にドライヤーの風を当てていく。
手で解かしながら、丁寧に。




「…………。」

クイーンはその星野の行動に特に発言する事はなかったが、
紅くなった顔が、今の心情を表していた。



すげーなげーけど、全然傷んでないし、綺麗な髪だな……。

星野は乾かしながらその美しい髪に魅了される。


いらない所で無駄に触ってしまいそうなのを堪えながら、
せっせと髪を乾かしていった。




それから結構な時間を掛けて、全ての髪を乾かし、漸く全体が乾いたな、と満足出来る位に仕上がる。



「……あ、ありがとうございます。」

クイーンは改めての礼を、星野に贈る。


ドライヤー中は、どうせ喋っても聞き取れないと、
お互い無口に作業を続けていたが、

その喧しい騒音から解放されると、
自分たちの周りがなんとも静かに感じた。



「いいって、もう大分遅いし、寝よーぜ?」


「……はい。」



ドライヤー達を片付けながら、星野はクイーンはもう寝室に行く事を促す。
が、クイーンは中々行動に出ず、
もじもじとしていた。




「どうかしたか・・・?」


「えっと、良ければ…なんですが、少し、お話しませんか・・・?」



クイーンの言葉に、星野は少し驚いたが、
すぐに平静を取り戻す。



クイーンが、改まって言うものだから、
きっときちんと話がしたい事なのだろうな、と理解して、

真摯に受け止めようと考えたからだ。




「……部屋、来るか?」

星野の問いに、クイーンはコクンと頷き、
ドライヤー達を戻した後、


二人は暗い廊下を歩き、
星野の部屋へと入っていった。




→アトガキ。
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