シリーズ本編。の置き場


□Take12,交わした約束。
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あたしは、
今、まもちゃんが言った言葉を、
白昼夢を見ているかの様な感覚で聞いていた。



ただただ、まもちゃんの言葉だけが頭に響いて、
先程まで聞こえていた筈の時計の秒針の音や、
風が窓を叩く音も、ずっとずっと遠くにある様に聞こえる。





「…………まも、ちゃん……?
それ……、本当……?」





まもちゃんが留学をしたがっていたのは分かってた。
だから、前に言われた時も応援した――――。



また行けるかもしれないという事も知っていた。

同じクラスの人にたまたま会った時、
仕切り直せるかもしれないんだというのを聞いた。



――――でも、

まもちゃんはもう行かないと思ってた………。


あたしを置いて、もう行く筈が無いと決め付けていた。



行ってしまったら、

………今度こそあたしの心はもたないと思うから――――。



行かない選択を、取って欲しかった…………。





「……ああ、教授から推薦があったんだ―――。
前と同じ条件で、行けるらしい……。」



まるで怖い話をするかの様なまもちゃんの雰囲気に、
あたしは耐えることは出来なくて、
泣いていた。



「分かってくれ」と、
まもちゃんの無言の重圧を感じる……。




まもちゃんの為、
分かってあげなきゃいけない…………。


そんな事は、誰に言われなくても
自分が一番わかってる。



そう言い聞かせて、前回は笑って、
理解をしたフリをして見送った。



―――――でも、もう無理だ…………。




「…………今、言うべき話ではないのかも知れない―――、
でも、ちゃんと言っておきたかった……。」



ごめん、と呟くまもちゃんに、
あたしは何にも言ってあげられなかった。


声も出ず、あたしは静かに泣いていた。



声を上げると言う考えにすらならなくて、
ただ、重力に従い、涙は流れていくばかりだった。



あたしを見ないまもちゃん、

まもちゃんを見れないあたしは、


互いに決して視線が合う事無く、
遠くでする無機物の音を聞く。



何分経ったのか分からないが、
涙が自然に止まるまでは、と泣き続けていた。


ぼーっと泣いている様は、何とも無様かもしれない……。


そんな事はお構い無しに、あたしは涙が止まるまでの時間、
自分では拭きも啜りもせず、
流れたままに、体内から溢れる水分を放置していた。




停まるまで時間は、
幾ら掛かったか分からなかったけど、
永遠の様に感じてた。



まもちゃんは何も言わず、何も行動せず、
じぃーっと涙の停まるまでをただ待っていた。






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