朧月夜。の置き場
□10.
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朝、小さな小窓しかないクイーンの寝所にも
夏の力強い朝日が射し込んできた。
朝から公務の多いクイーンは、
いつもの習慣で、早くに目が覚める。
「…………あれ?」
寝惚け眼で辺りを見、自室でない事に少し戸惑っていたが、
すぐにここがどこだったか思い出す。
「あ、そうか・・・・、私、過去に――…。」
昨日は気持ちが高ぶっていたので、
恥ずかしいと感じる事は無かったが、
よくよく思い出せば、すごく恥ずかしいと、
クイーンは昨日の星野とのやり取りを思い出して、赤面した。
一人、どんな顔で会えばいいのかとあたふたしてしまう。
取り敢えず、顔を洗いたい、と
そーっと部屋から出てみる。
辺りは静かで、まだ三人とも寝ているのだと分かった。
起こさぬように、静かに廊下を渡っていく。
昨日も使い方を教わった洗面所で、
クイーン用にと買っておいた洗顔を使い、顔を洗う。
歯ブラシも用意していたので、そのまま歯も磨いて、
身支度を済ましていく。
またそろそろと部屋に戻り、
昨日買っておいた服に着替える。
髪はいつものようにお団子に括り、準備万端だ。
1人で何だかんだと身支度したり行動したりするのはとても新鮮だった。
いつもなら必ずと言って良いほど守護戦士や、メイドやと誰かが側に付いていることが多いのが日常。
そういえば、過去に来る前も変に周りに人が寄ってこなくて可笑しいかった。
わたくしが落ち込んでいたから、そっとしといてくれたのだろうと思っていたが、もしかしたらクロノスが何かしていたのだろうか……?
1人で居られる事が珍しいので、ついつい色々なことを頭で考えてしまう。
ぐ〜〜〜〜…、
少女の時も、大人になっても、食欲は変わらず旺盛で、
いつもなら朝食を食べている時間なのに食べていないと、
お腹が減ったと身体がクレームをつけてきた。
「勝手にキッチンを触っても良いでしょうかね・・・?」
グーグーなるお腹。
気持ち的にもお腹が減ったなと何か食べたいと思うが、
人様のキッチンで、勝手に食料を漁っても良いものだろうか?
もう何年もキッチンになど立ったことがない。
自分は、もう主婦や妻、お母さんの立場で行動することは殆ど無く、全てを国を統治することに捧げていたから。
そのせいで娘に寂しい思いをさせていることも多かった。
自分がこちらに来てしまっている間、国や愛娘はどうしているのだろうか、と心配になる。
ぐーーーーーっ、
国のことを考えているのに、本当にわたくしの身体は我が儘で、
腹が減った!と今度は大きな音で伝えてきた。
「・・・情けない。」
自分の食欲に肩を落としつつ、本当にお腹が減って仕方なかったので、
取り敢えずキッチンに向かうことにした。
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