朧月夜。の置き場


□07.
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待たせては悪いと、
脱ぎにくい構成になっているドレスを
クイーンは慌てながら脱いでいく。




「……ここって、入ったことはなかった、なあ。
使っていないのかしら・・・?」


散々と物は置かれてはいるが、
只の物置ではないような部屋に、
少し、たじろいだ。




「あんなに出入りしていたのに、
まだ知らない部屋なんてあったのね…。」


昼間なのに、荷物で窓が隠され
少し薄暗い部屋。




「あ、ぼーっとしている場合ではなかった…っ」


脱ぎ終えたドレスを丁寧に畳み、
用意して貰った衣装ケースへと入れ込む。




そして、星野に貸し出された服に手を伸ばした。



「………星野。変わってないね、当たり前か・・・、私が昔に来たのだから……。」




星野の顔を思い浮かべ、クイーンは微笑む。


会えた嬉しさが、溢れてくる。


星野の服を掴み、顔に当てれば、
懐かしい、星野の匂いがした。




また、胸がぎゅっと切なくなるのを感じる。



改めて、貸してくれている服が星野の物だと感じると、
少し、恥ずかしい気もした。



「…何か思ったより小さい服にしてくれたけど、
入るかしら・・・。」




アイドルだからな、とやたらと細い星野を思い出し、
少し不安になりながら袖を通すと、

見た目よりも幅があるらしく、
入るかどころか、ブカブカになってしまった。




「……う〜ん、これはこれで恥ずかしいわ…。」



鏡がない為、自分で確認できないなと、
諦めてそのままで、部屋を出て、リビングへと戻る。



戸を開けて、ありがとうとお礼を言おうとした。

が、出来なかった……。




「どういった経歴だったのか、お聞きしても宜しいですか…?」



中から聞こえる、自分についての話。



「大気さん、聞いて…どうするんです?
その事については、今の状況で必要な情報でしょうか…?」



「失敬…、只の好奇心と探求心です。
状況が状況なので、未来の月野さんについて、より多くの情報が得たいだけですよ・・・。
裏事情もありません。」



緊迫した空気が、扉の外からでも感じれた。





「……子ども、おだんごに・・・似てるのか?」




星野の声に、何故だか罪悪感を感じてしまう。




「あ、誤解しないでくれなっ、
子どもの事や、未来の事、おだんごから少し、聞いてた。
だから、今更なんだぜ?俺からしたら…。
まさか、クイーンになってるとは思わなかったけどな、
そこまで詳しくは聞いてなかったし…。
だから、衛さんとの事とか、そういう話、俺に遠慮しないで話してくれ。
つか、俺が聞きたい…かな。」



聞きたいと言った星野の言葉に、
私は止めて、と止めに入りたかった。

……が、星野の気持ちを感じると、出来なかった。

星野は真摯に、未来の私のこと、過去に私たちが下した決断について向き合ってくれている。
それを自分の保身の為に停めるなんて、したく…なかった。






「とても……、よく似ているわ。姿形も、心も・・・。」




「ホント、そっくりだったよ。
まあ、うさぎちゃんに比べて、要領良かったのは
衛さん似だと思うけど。」





「…私達がちびうさちゃん、・・・スモールレディに出会ったのは、
クイーンの指示で、スモールレディが過去へと逃亡していた時よ。」








ますます、入り辛い雰囲気を感じて、
扉の前で立ち往生してしまう。




「……どうしよう・・・。」



大気が事情を聞きたいと願うのも当然で、
その事を話している事については、

私から話さねばならないことを、
皆が代弁してくれていると、感謝している。



やはり、――スモールレディの事について、以外は………。




こんなのは自分の我が儘でしかないのだろうが、


彼らには・・・・、星野には、

スモールレディについて知られたくなかった……。




話してしまっている皆への怒り、
そんな感情まで出てしまう。



そしてそのすぐ後には、
そんな事を思ってしまう自分の欺とさに嫌悪した。





「……私は、本当にズルいわよね・・・。」



立ちすくむ扉の前で、
堪え様のない罪悪感を感じながら、
クイーンは、
自分はもう星野と一緒には居られないの人間なのだと、


改めて実感した。






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