番外編

□血の味のキスのあとに。
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俺は、爽が街を片付けるのを見ながら、
何ともいえない感情が渦巻いていた。



二人で街を片付け、遺体を弔い、
火を点けて燃やした。

爽が、全て燃やそう、と言ってきたからだ。



この時、俺は分かっていた筈なんだ、

ああ、もうここには戻る気がないのだと。
死ぬ気なんだ……と。


それでも俺は、自分の感情を整理するので一杯だった。



木の葉の暗部総隊長である俺を出し抜き、
勝手な事をしやがったという憤りと、

無惨に死んだ者たちへ感じていた、親愛の情、

それを引き裂いた奴への憎しみ、

本当なら俺がしなくてはいけなかったのだという、手を掛けずに済んだ事への安堵――――。


忍の理性と、人の感情が入り雑じり、
感覚が麻痺している様だった。



火を掛け、街を離れた後、
俺たちは野宿の出来る場所を探していた。


他の街に頼ることなど、
出来ないだろう、と分かっていたからだった。




「……私たち、助かって、良かったねって、
言ってていいのかな・・・?」

その言葉に、もう希望などない気がした。

これから独りで生きなければいけない爽に、
どう言ったらいいのかが分からなかった。


が、


「……俺にも、正直分からない。
でも、あいつ等なら・・・いいに決まってるだろ、と言ってくれたのではないか…?」



そんな奴等だった。

だから、任務と分かっていながら、
素で対峙してしまっていた。


忍にあるまじき失態だった。
総隊長であるこの俺が、アカデミーで習うような事を自らミスしてしまった。



それが悪い気がしないのも、また問題だ、と笑ってしまう。




「……あんたは、どうする?」

「どう、とは?」



「私、兄さんたちの首を、取り戻したいの…。」



キッと涙を流しながら言う爽の瞳には、復讐の心しか見れなかった。


「…止めておけ。
助かった命を、あいつらにくれてやる気か・・・?」



「・・・だって、だってっ!!」




「復讐しか心にないのなら、余計に俺は止める。
怒りや憎しみで心を充たしてしまえば、見えるものも見えなくなるぞ。」



ふと、俺の頭にサスケが浮かんだ。

ああ、あいつも、今の爽と同じことを、七歳で経験したんだな。



爽の姿を見ていると、サスケの事も、少し分かってやれる気がした。





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