拍手小話置き場。


□雛祭り記念。(星うさ)
1ページ/1ページ







「おだんご?」



鼻歌混じりに、
今日当たるのに忘れた宿題のノートを
写さして貰っていた。


忘れたと慌てていたのにご機嫌なあたしを見て、
星野は少し不思議がる。



「なんでそんなご機嫌なんだよ?」


そういう星野も上機嫌に、
喜んでノートを見せてくれた。


「いいじゃない、
あんたこそイヤに機嫌が良いわね〜。」


お互い様、とばかりに言い返す。



「俺は今日久々のオフだから嬉しいだけ。」



や〜っと貰えたんだぜー。
と腕を伸ばす。

若い身空で、
まるでサラリーマンの日曜日の様だなと思う。




「あっそ、よかったじゃない。」


「素っ気ない返事だなあ。
な、今日どっか行こうぜ?」



うきうきと休みを満喫しようとする彼に、
あたしは少し笑ってしまった。


なんか子供みたい。





男はいつまでも少年、

って、
誰が言い出したんだっけ。




「まったく休みの日ぐらい身体休めないと、
その内倒れちゃうんだから。

今日ぐらい大人しくしときなさいよ〜。」


心境はまるで母親。

どうして男の人って自分の身体を気遣えないのかなー。




「大丈夫だって。
まだまだ若いんだぜー、
少しの無茶ぐらい、なんともないさ。」




「も〜…、知らないからね〜。」


言い出したら聞かない、
ま、あたしもだけと・・・。





「なあ、こないだ言ってた、
美味しいパイの店行こーぜ!」

「だ〜めよ。
今日は家でお雛様飾って、
ちらし寿司食べるんだから!」


懲りずに誘ってくる彼を
きっぱりと断る。




「へ〜、お雛様ってなんだよ?」




・・・・・・・。



その無垢な言葉に、
え?、と聞き返したくなる。


まさか、日本人で知らない人がいるなんて…。




「お雛様…、本当に知らないの・・・?」


ああ、なんて、
きょとんと相槌を打つ彼に、
あたしはまたも驚いてしまった。





「星野…、ずっと日本に住んでたんだよね?」


「あっいやー、住んでたのはもっとずっと遠いとこだぜ。

日本の事なんて全然知らねーし。ハハハっ。」



なんか誤魔化された。

そんな気もしたけど、ふーんと相槌を打って、
納得する事にした。





「じゃ〜、見に来る?」

「え?」



あたしの言葉に、今度は彼が驚いた。



「お雛様、ちゃんと見たことないんでしょ?
家に飾ってるから、見に来なよ。」





「まじ?やりー!
行く行くっ♪」


あからさまに喜ぶ彼に、
なんだか照れてしまう。



「あのねー、言っときますけど!
お雛様見せるだけだかんねーっ
変な勘違いしないでよっ」




「分かってるってー。」



ほんとに分かってんのかなあ?

そう疑ってしまうぐらい、喜びを隠さず表す星野。




「じゃあ、今日の放課後ね。
着替えてからでいいよ、家も片付けなきゃだし。」


「了解っ」





そう話が纏まっていく内に、
チャイムが鳴り、先生が入ってきた。




なんとかギリギリ書き終えて、
ありがと、とノートを返し、
自分の机に向き直す。





「おだんごっ、楽しみにしてるからな♪」


ニコニコ満面の笑みの彼に、

ちょっと早まったかな…


と、少し後悔したのは、内緒だらね。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ