oh-furi!!
□Hello.How are you?
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「めんどーい」
「もう帰りたいよぉぉ」
週ごとに回ってくる掃除当番は、思ってた以上に面倒くさい。
特に職員室掃除なんて本当に嫌だ!(どこかの誰かさんが「職員室掃除なら楽そう」とか言うから悪い)
この前なんて、食べ終わった弁当が机の下から出てきて水谷に押し付けた。
唯一いいところがあるとしたら、コーヒーのいい香りがするところぐらいだ。
「もう少しで終わるから」
「花井!早く!」
「お前らも動けー!!」
ストーブもあるなんて教室よりいい環境じゃん、なんて思いながら水谷と二人座り込んでいた。
阿部が無言で私たちのことを箒で掃きだす。
「痛い、痛い!箒痛い!」
「俺らはゴミ扱いですか!」
「いや、ゴミ以下」
ゴミでもお前らより役に立つ、なんて澄ました顔で言う。
「はぁ、喧嘩すんなよ。俺ゴミ捨て行ってくっから」
「ついでにこいつらも持っていってくれ」
「酷いよ、阿部!」
私の言葉なんてどこ吹く風。敢無く無視されるのがオチだった。
こんな言い合いに慣れを感じる自分がイタイ…
そのとき
『プルルルー』
「あ、」
職員室の電話が鳴った。
一番前にある教頭の席で、学校の電話が鳴った。水谷は立ち上がり当たり前かのように受話器を手にした。
「あ!水谷!」
「もしもしー?」
「バッカ!何してんの!」
こればかりはヤバイと思った。もしも、学校にとって大切な相手(教育委員会とか、父母会とか)だったらどーすんの!
しかし、水谷は「もしもし」と言ったきりピタッと固まってしまっていた。
「おい、どーした」
受話器からはよく聞こえないけど、声がしてんのは確かだった。
電池が切れたか?水谷?、と呼びかけても水谷は首を振るばかりで、阿部に無言で受話器を押し付けた。
「はぁ?ちゃんと応対出来ねぇんだったら、最初から出るなよな」
呆れながら「もしもし?」と受話器に耳を近づけると
「おい」
「ん、私?」
「替われ」
え、もしかして私にだったの?でも携帯持ってるから学校に電話するわけないよね…
半信半疑のまま、阿部から受話器を受け取る。もう応対は3人目だ、たらい回しにされてる相手が可哀想…
「もしもし」
「Hello?」
あー…そういうことね。
「阿部、返す!!」
「返品不可!」
お前も分かったか、という顔つきで阿部はさっと電話から遠ざかる。
「水谷!」
「ごめんなー!!」
くるりと背を向け、水谷も阿部同様逃げ出しやがった。
「クソレフト、おまえもかーッ!!」
「それ、ブルータス!クソレフトじゃないから!」
今の台詞でよく元ネタが分かったな、と半ば感心するがそんなこと言ってる場合じゃぁない!!
何か電話の人は「Mary?Mary?」と知らない人を呼んでいる。誰だよ、メアリーさん!
「おい、早く帰るぞ」
「花井!!」
おう、アナタって人はナイスタイミングに登場しすぎだから!好感度急上昇だよ、私の中で!
ゴミ捨てから帰ったばかりで、何も分かっていない花井に受話器を渡すと、私も水谷と同様電話から極力離れた。
「何なんだ、突然」
「電話!外人!英語!メアリー!」
「はぁ?」
たっくメアリーって誰だよ、と言いながら花井は「もしもし」と電話に出た。
「…会話、してんの?」
「花井、英語は得意だって言ってたよ」
「へー、阿部や水谷と違って頼もしいこと」
「お前だって逃げてきたくせに」
「私が英語無理なの知ってんでしょ!!」
後ろで三人ワーキャーもめてる間に、花井の英語は途切れ(唯一「See you」だけは聞き取れた)受話器を置く音がした。
「花井、ありがとー!!」
「あ、いや」
「ねーねー、何だったの?電話」
「ただの間違い電話」
ただの間違い電話如きに、私たちは何慌ててんだか…。いや慌てて当然だと主張する!
「掃除も終わったし、さっさと帰んぞ」
「おいーす」
Hello.How are you?
(俺たちの日常って、こんなもん)(アイム ファイン センキュー!)
2008.0202.