Short Novel
□甘くないチョコレート
1ページ/4ページ
昔から、意地っ張りだと言われてきた。
けれど今更、自分を変えようとも思わない。
友人は私を不器用と呼ぶ。
それは、認めたくない事実だった。
甘くないチョコレート
私の名前は、佐藤千夜子(サトウチヨコ)。
耳だけで聞くと『砂糖』と『チョコ』で二重に甘そうな名前とよく言われるが、実際はまったく甘くない、ともよく言われる。
世間は受験シーズンの真っ只中、高校三年生の十二月のある日。
クラスメイトや友人達が鬼気迫る表情で入試までの日々を悲鳴をあげて過ごしている中、私は一足先に短大への推薦入学が決定していた。
それは、毛足の長い白のロングマフラーに顔を埋め、お気に入りの焦げ茶色の手袋をはめた手を制服の上から羽織っているダウンコートのポケットに突っ込み、さかさかと早足で帰宅の途についていた時のこと。
もう少しでマンションに帰りつく、そう思って、私は寒さに耐えつつ角を右に曲がった。
何となく、いつも大量のごみ袋がうず高く積まれているごみ収集所へ視線を向けると――
「……え?」
目に入った光景に呆然として、鞄を落とした。