心の精霊

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―私は精霊“ヴェリウス”

どの精霊とも同じように私は消滅しては生まれ変わる

そして心の精霊が故に、先代の知識や戦い方を読み取り習得する事ができる


人間界で得た知識や精霊術を…



しかし、出会った人の記憶や思い出は読み取ることはできない

その人達を知り、共に過ごしたヴェリウスは私ではないからだ


いわゆる古くから定められている“掟”…



――



―私達はエリーゼ達のおかげで追っ手に見つかることなくハ・ミルの西を進み、指先が尖った手のような巨大な岩と長大な滝がある《ギジル海瀑》に到達した


『「……」』


観光目的でここに来ていればきっと感動の声を上げていただろうが誰も上げず、私とジュードは迷いや未練が渦巻いていてとてもそんな気分ではなかった


「このギジル海瀑を越えれば二・アケリアなんだろ?

このまま一気に行っちまった方がよさそうだな」

「無論そのつもりだ」


ミラとアルヴィンは、目的地へと進む事だけを考えていた



《――の生まれ変わりみたいでな!》

《お主…?》



『(これで二人目

私を知っているような素振りをした人で私は知らない人…)』


―先代のヴェリウスと重ねているのはありえない

私は生まれ変わって何十年も精霊界にいたのだ

研究所で会った銀髪の少女なんて生まれていないはず

ハ・ミルで会った大柄の男だってきっと時が経ちすぎて忘れているはず…


『(だとしたら人違いのはず、なのに…)』


―どうしてこんなに胸騒ぎがするんだろう…



「―…ド、君は戻るといい。ルナも気になるのならあの男の元に行くといい」

『……えっ?』

「短い付き合いだったが、感謝している」


ミラに名前を呼ばれて我に返ると、別れを告げるミラとジュードの間に重い空気を感じた


『えっ、と…アルヴィン…何の話?』


私はアルヴィンの横にコソッと動いて聞いた


「聞いてなかったのか?

ハ・ミルの事だよ。俺達を追ってきた兵が村に手を出さずにいると思うか?」

『っ!』



―ラ・シュガル兵にとってア・ジュールにある町や村は敵国の領地

おそらく私達を匿ったという理不尽な理由も兼ねて襲撃するだろう


『(あの時の負は村を襲撃するラ・シュガル兵だったんだ…!)

戻らないと』


私はハ・ミルの住民を助ける為に来た道を戻ろう振り返った


ガシッ!

「っと、待てよ」

『離して!、村の人達を助けないと』


アルヴィンが珍しく慌てた様子で止めてそれを見た二人がこちらに目を向けたが、私は気にせず腕を掴む手を振りほどこうとした


「なるほど、それが今君の為すべき事なのか?」

『そうよ、私はその為に旅をしてるから』

「だそうだジュード、君も村が心配なら共に戻るといい」

「仲間割れかよ…」

私の腕を離したアルヴィンがやれやれといった顔をする


「…どうしてミラはそうなの?

どうしてそんなに、何に対しても終始冷静なの?」


ミラの言葉にカッとなったジュードは疑問を投げつけた

それに対してミラは首を傾げてジュードの言いたい事を考える
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