心の精霊

□03
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―そうだよね

偶然の重なりがきっかけでこんな事になったら誰だって…


そして、その偶然を作ったのは…


《僕は、その…この人が気になって…》


《出口まで一緒に行こう!》

《う、うん》


……わたし、だ…



バタバタッ

『え…?』


私達を捕らえようと伸ばした兵士達の手は届くことなくその場に倒れた


そして…



「軍はお堅いねぇ、女と子ども相手に大人げないったら」

「っ!」


いつの間にか私達のすぐそばに大剣を肩に持つ飄々とした長身の男が立っていた


「あなたは…?」
『誰…?』

「おっと、話は後だ。連れの美人が行っちまうよ?」


どうやら兵士が倒れたのは彼の仕業のようだ

「で、でも…」


「ぼやぼやしてると一巻の終わりだぜ?

逮捕状が出て軍が出て来てるって事はだ、君達はもうSランクの犯罪人扱いされてるってことだよ」


「え、Sランク…?」
『犯罪人…』


「あぁ、捕まったら間違いなく極刑だな。言い訳する余地も与えられない」

『そんな…っ!?』


極刑という言葉に驚愕していると腕を掴むジュードの手の力が抜けてスルッと落ちた


『ジュード…』


私はジュードの顔を見れなくて俯いた


「そういうわけで迷ってる暇はないってことだ。ほら」


―ここにいたら捕まって極刑になるだけ

でも…


ギュッ

『……へっ?』


今度は手を繋がれて私はすっとんきょうな声を挙げた


「行こうルナ!」

『ジュード…、っ、うん!』


私はジュードの手を離さないように握り返してジュードの背を見ながら走った


そのすぐ後ろにニヤニヤ笑って長身の俺が付いてきた



「待て、貴様達!、待たんかあ!!」


『(あの兵士達は仕事で逮捕しにきたから、元々悪い人じゃないんだね…)』


走りながらも私は気になって後ろを振り返って意識を集中させた


『えっ……?』


そこで見えた思いもよらない真実に私は目を疑った


『(そんなはずない!、だって…)

……っ』


何か対処したかったが繋いだ手を見て、私は振り切り走る事に集中した


「……」


そんな私の動揺をある人物が見ていたのを知らずに…



――


「間に合わなかった…」


既に出航してしまった船に肩を落とすジュード


「…なに、まだ手はあるって」


『えっ?』
「わっ!」

不意に身体が持ち上げられて気づいた時には私は長身の男の左肩、ジュードは右肩に担がれていた


「ちょっと…!?」
『なっ、何!?』


「喋んなよ、舌噛むぜ」


そう言うと男は走り出し積まれた木箱を駆け上り台にして勢いよく海を跳んで船に乗った
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