心の精霊

□05
2ページ/7ページ



――

―この村には宿はなく、村長のご厚意に甘えて村長の家で泊まる事になった私達

するとアルヴィンは道具と食料の調達をしてくると言って一人で買い出しに行った


『(人間の家ってこんな感じなんだ…)』

「ルナ、あまり不用意に触ったら駄目だからね」

『はーい…』


椅子に座るジュードとミラの横で興味津々にあちこちを物色している私にジュードは注意した


『(ときどき思うけど、私ってジュードより年上だよね…?

もっと人としての緊張感…、自覚を持つべきなのかな)』


「…ねぇミラ、あの研究所にあった装置、黒匣って言ってたよね?」


自身の振舞いに悩んでいるとジュードがミラに話しだした


「あぁ、それがどうかしたか?」

「ミラはどうしてあれを壊そうとしているの?

…ルナも」

『わっ、私…!、も?』


まさか私の名前も出るとは思わなかったので驚いて声が裏返った


「マナを吸い取られてるあの状態から精霊術で壊そうとする行動…

それ以前に壊そうと思ってないとできないよ」


『(あ…)』


―確かにそうだ

あの時、負の闇が見えなかったら、壊すなんて意識を持たずにあの苦しみにもがく事しかできなかったはずだ



「…、あれは人が手にしてはいけないモノだ。だから人の手から離さねばならない」


私が納得して返す言葉を探している様子を見据えてから、ジュードに言葉を返したミラ


「どうして?」

「君がその理由を知る必要を感じないな」

「っ!

……信用されてないんだね」


ミラの言葉に傷ついた表情で私達を見て、俯いて言ったジュード

その声は明らかに拗ねていた


「そういう問題ではないのだが…

そうだな、君たち人は赤子が刃物を手に遊んでいたらどうする?」

「そんなの取り上げるに決まってるよ」

ジュードの答えに私も同意見だった


「それと同じ事だ

人が赤子を守ろうとするように、私は世界を守る為にあのクルスニクの槍を破壊しなければならない」

「っ……」


迷いなく言い切るミラにジュードは反論しようとしたが、ミラの決意の目をただ見ることしかできなかった


「…僕、アルヴィンのところに行って来るね」


沈黙の末、ジュードは重い足取りで村長の家を後にした
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ