心の精霊

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「…もっと感傷的になって欲しいのか?

それは難しいな。君達人もよく言うだろう《感傷に浸っているヒマはない》とな」

「使命があるから?、じゃあやるべき事があるなら感傷的になっちゃいけないの?」

「人は感傷的になっても為すべき事を為せるものなのか?」

「わかんないよ、そんなの…」

ジュードのミラの討論の末、言葉が詰まったのはジュードの方


「でも…やってみないと」

『うん、やる前から諦めたら後悔が残るよ

やり直しなんて出来ないのだから…』



―ジュードを巻き込んで

村の人達まで巻き込んでしまった


あの日、あの精霊の言う通り人間界に降りていなければなどと思ってしまう



「なら、君達がやってみてはどうだ?

君達の為すべき事をそのままの君達で。そうすれば自ずと答えにたどり着けるかもしれない」


ミラは純粋に思った事を伝えると再び前を見て一人で進みだした


『「私《僕》の…為すべき事…」』


その答えは私には見えているが、それが本当に正しいのか解らなくなっていた

そして、ジュードもまたミラの言葉に悩み立ち尽くしていた


「まぁそう難しく考えるなって

マクスウェル様のように割り切って考えられないのが俺達人間ってもんだ」


アルヴィンは私とジュードの肩に手を回して彼なりのやり方でさりげなく慰めに来た


「…アルヴィンには為すべき事ってあるの?」

「さてな。ここで俺があるって言ったらおたくらますます迷っちまうだろ?」


そう言ってアルヴィンが私達から離れると、ほとんど同時に私とジュードは顔を伏せた


「んで、どうする?。このままだとミラに置いていかれるぜ

本当に村に戻るのか?」

『それは…』

「言っとくがおたくらはS級犯罪人だ。向こうは加減はなんて緩い真似はしない

仮に二人で戻っても、為すべき事を為すどころか命の保障もないだろうな」


アルヴィンに厳しい現実を浴びせられ私は目を見開き唇を噛み締めた



―村を、人間を助けるのが私の使命

けど今は命を賭けられない…



『…このままミラに付いて行く』

「…僕も一緒に行くよ」


二人の答えにアルヴィンは頷いてミラの故郷へと歩き出した



―どうか、無事で…



私は村の方を見て祈ってからジュード達の後ろを歩いた


「無駄死になんてさせるかよ…、ようやく…」


切なく響いたその声を聞いた者は誰もいなかった…




――


―一方、ルナの去った精霊界では…



“まさか私と貴方の――が一緒に旅をしてるなんて…

不思議ですね”


ルナが去った精霊界に一つの光が降りてきた


「ふん、己が使命を捨てた主が今さら何の用だ?」


“捨ててはいないわ。言ったはず…

私は貴方や他の大精霊と違って人を…”

「その話はもう事が済んだ。クドイぞ――」

“……ズルい大精霊ね…

でも、感謝しているわ。約束を果たしてくれた事に”


そう儚げに言うと光は輝きを失い一瞬点滅した


「何故力を与えた?、“あの力”はお主にしか使えはしない」

“使えるわ……、《あの子》は人間が大好きだもの…

だから、…もい……にたた……、きゃ……”


「――!!」


大精霊が光の主の名を叫ぶのと同時に光はスーッと小さくなり消えた


「馬鹿者が…」


その呟きはまるで親が子を叱るような情が知らぬ間に入っていた…
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