心の精霊

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私達はギジル海瀑の海岸沿いを進み、滝付近のゴツゴツした石の道を歩いていた


途中、岩に擬態した蛸がいる話をジュードとアルヴィンがしているのを私とミラは会話に入らず聞いていた


『(蛸が岩に擬態、か…)』


―一体、どれくらい前のヴェリウス(私)が知ったんだろ…?



「!、ルナ!」

『え?、と…っ!』


危うく道を外れて海に落ちそうになるところをミラが呼び止めてくれたおかげでなんとか踏み留まった


「大丈夫?」

『う、うん。ビックリしたー…』


ジュードの問いかけに返すと会話は続かず沈黙となった


「…ここらでちょっと休憩しないか?、足場ばかり歩いてたせいで足が痛い」

「到着してから休めばいいだろう。二・アケリアまでそう遠くないぞ」

「まぁまぁ」


アルヴィンの提案に反対するミラだがそれを宥めるアルヴィン


「そう、だね。少し休憩しよう」

「ルナも、いいだろ?」

『…(もしかして、気を遣って…)

…うん、休もっか』


ジュードとアルヴィンの気遣いに嬉しくなった私の同意で私達は少し休憩する事になった



「ジュード、向こうの崖の縁まで行ってみないか?

あそこだったら風当たりも眺めもよさそうだ」

「…うん」


ジュードはチラッと私を見たが私は気付かず浮かない顔のままアルヴィンの誘いに乗り二人で行った



「全く、要らぬ気を回すやつだ

…傭兵は皆ああなのだろうか?」

『そうだといいね』


私の二人が行く背を見ながら答えるとミラは首を傾げた


「ルナ、君は行かないのか?」

『うん、男だけの方がジュードも落ち着くと思うから』

「そうか、ルナもアルヴィンと同じ…、似た者同士というワケか」

『ちょっと違う気が…』


ツッコミを入れるが何の返しもなくミラは私に背を向けた


「だが君も為すべき事を考える立場だろう」

『そう、“だった”の方が正しいかな』

「というと?」

『私はミラみたいにあの時決めた責任を為すよ』


―私、自分の歴史に捕らわれすぎてまた忘れてた

今できる事を…

ハ・ミルで決めた責任を果たす事を見失っていた



「そうか、なら君の思うままにやってみるといい」

『うん!、ミラのおかげだよ、ありがとう』


「…君は本当に変わっているな」

『えっ?』

「いや。ジュードにもその覚悟を伝えるといい」


ミラの呟きを聞き取れず私は首を傾げたが、ミラは話を切り替えるように手を腰に当てて体制を変えた


『ジュード、だけ…?』

「彼は村の事と同じくらい君の事を気にかけていた

恐らく今もだろうな」

『っ…!、私…行って来る!』


私はミラにお礼を言って足場に気をつけながら飛んで駆けた


「……使命が最優先…

それは自覚しているのだが、今の私は彼女の正体の方が気がかりだ」


私の姿が見えなくなってしばらくしてからミラはそう呟いた
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