LOVE▲TRIANGLEU
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…私がリボーンさんの弱み?
「そんな奴の話信じるな!!」
コロネロの叫びが頭に響いて来ない。私にはたださっきの言葉だけが頭の中でぐるぐる回っていた。
「そっか…そうだよね」
私は彼の重荷なだけ。リボーンさんがいくら想いを寄せてくれていても、答えをなかなか出さないのだから。待ってくれると言ってくれたけど、本心はそうじゃないかもしれない。どれほど彼に迷惑させているか痛感する。
「ひな!!」
「……」
「危ねぇ!!」
温かいものに包まれた次の瞬間、身体が床を転がる。我に帰ればそれはコロネロだった。私が居た所を見ると銃弾の跡が残っている。あのまま居たら死なないにしろ重傷を負っていた。
「…ありがとう」
「礼はいいからしゃんとしろコラ」
ばしんと背中を強く叩かれ背筋が伸びる。顔をあげれば怒っているような、悲しんでいるような…そんな顔つきのコロネロ。
「アイツはリボーンであってリボーンじゃねぇ」
「…うん、分かってる。分かってるけど」
その後に続く言葉を読み取ったのか、彼は一度息を深く吐いた後、ぽつりと呟いた。
「俺だってお前は弱みだコラ」
「えっ…?」
「もし海軍かお前のどちらかを選ばないとならねぇとしたら…」
一旦言葉を区切り私を真っ直ぐ見つめる。
「間違いなくお前を選ぶ」
「…コロネロ」
「アイツだってそうだ。ボンゴレかお前かって聞かれたらひなを選ぶぞコラ」
「そんなことは「ないって言えるか?」
コロネロはCOMSUBINの隊員達を育てるのが生き甲斐に見えるし、リボーンさんにとってもあのボスが率いるボンゴレファミリーは何物にも代えがたいものだろう。それよりもたった一人の女、私の方が大事だなんて…信じられない。
「…男ってのはな、好きな女の前ではどうしようもねぇ一人の男に成り下がるんだコラ」
俺もリボーンもな、コロネロは自嘲気味に笑った。
「ソイツの為なら無茶だってするし、自分の大事なものより優先する」
「…私はお荷物ってことだよね」
「ある意味な」
「そっか…」
気分が落ち込み顔を俯けると、まだ話は終わってねぇと引き戻された。
「でもそれよりも…強みでもあるんだコラ」
話が矛盾していて理解出来ずに首を傾げる。
「お前が居てくれるだけで、お前が笑ってくれるだけで俺の力になるんだコラ」
そんな風に想ってくれていたとは知らず、目を見開く。私のそんな顔を見て、言っておくが嘘じゃねぇぞ、と付け足された。
「でも…」
「お前は俺らよりアイツを信じるのかコラ」
"俺"ではなく"俺ら"、そう言ったのはコロネロにはリボーンさんの気持ちが分かっているからということだろう。…勿論どちらかを信じるかなんて聞かれなくても決まってる。それが伝わったんだろう。コロネロは何時ものように笑うと私の頭を軽く叩いた。
「さっさと帰ってパフェ食いに行くぞ。三人でな」
「…うん」
今はリボーンさんではない、彼の姿を警戒しつつファイルに載っていた憑依弾のデータを呼び起こす。確かあそこには…魂の本体を滅さなければ延々と憑依続けると書かれていた。私がさっき射殺したのは、魂の大部分がノーノ君に移っていた彼の身体…いわば抜け殻だ。
「…まだ彼の身体は死んでないってこと?」
「そういうことだ」
振り向く前に撃った弾はノーノ君の叔父さんの肩に掠った。心臓に二発撃ったはずなのに…。彼の後ろからもさっき倒したはずのネオファミリーの人々が続々と部屋に入って来た。血を流しながらふらふらとこちらへ向かっている。恐らく無理に身体を動かしているのだろう。直ぐさま無線で獄寺さん達に連絡を取ろうとするものの、ザーザーと音がするだけ。恐らく電波遮断機でもあるんだろう。私とコロネロでどうにかするしかないか…。
「ママ…」
小さな声が聞こえた方を見るとノーノ君が隅の戸棚の影に隠れていた。幼いながらも身の危険を感じたんだろう。私は安心させるように笑った。
「ちょっと待っててね。直ぐに終わらせるから」
こくんと頷き、出来るだけ奥に入ったノーノ君を見送る。間合いを取っていると隣のコロネロが耳打ちした。
「アイツらの身体は殆どボロボロだから動けなくすればいい」
「…リボーンさんは?」
本人ではないといえど、戦闘能力は彼自身に匹敵するだろう。リボーンさんを相手にするには一人では荷が重い。二人で掛かるしかないな…。
「俺がやる」
前を見つめたままの横顔から覚悟が伝わる。それでも私は賛成出来ない。コロネロが強いことは分かっているけれど、相手が相手だ。
「…正気なの?」
「闘いでアイツに勝ったことは一度もねぇ。引き分けか…僅差で負ける」
「なら私も…」
「いざという時、リボーンを撃つ覚悟はねぇだろ?だったら他の奴らを片付けろコラ」
「でも!」
コロネロまで身体を乗っ取られたら…最悪、死んでしまったらもう為す術がない。二人の方がまだ上手くいく可能性は高い。せがむように腕を握ると、私の方を見た。
「頼む…俺にやらせてくれ」
懇願するように言われ、私は云とも寸とも言えなかった。コロネロなりの考えがあるんだろうか。私には分からないけれど。今のコロネロには何を言ってももう聞いてくれない気がした。返事をしない代わりに彼の肩に顔を押し付けると大きな手が何時ものように優しく頭を撫でてくれた。大丈夫…心配すんな、そんな言葉が伝わった。
ひなを見ると奴らの関節を外したり、神経を麻痺させ、淡々と頭数を減らしていく。その顔には一抹の不安も見られない。俺を信頼してくれたようだ。…期待に応えねぇとな。
「お前の相手は俺だコラ」
誰よりも一番顔を合わせてきたアイツにこれほど違和感を感じたことはない。その笑い方もアイツそのものだが、どこと無く異質に見える。
「…コロネロ君か。」
「ソイツの身体で君付けすんのは止めろ。虫酸が走る」
「君もひなさんに惹かれているんだろう?」
「…だったら何だ」
出来るかぎり冷静を保つように目の前を見据える。
「チャンスじゃないのかい?今殺すことも出来るぞ」
「ライバルが減るとでも言いたいのかコラ」
「そうだとも」
「………ざけんな」
何も知らない赤の他人が俺らに介入してくんじゃねぇ。
「俺は正々堂々、ひなを自分のものにする。そんなセコい真似するかよ」
なぁ、リボーン。お前だってそう思うだろ?
銃を構えたと同時に撃たれた弾を跳んでかわす。アイツが撃つ弾丸に比べれば僅かに遅かった。
「リボーン!聞いてるか」
拳を突き出すとカウンターを喰らう。吹き飛ばされた身体の態勢を調え、声をあげる。
「お前の弱みをひなが知って嘆いてたぞコラ」
彼女のあの顔が忘れられない。あんな絶望的な顔は一度しか見たことがなかったから…
「アイツを悲しませていいのかよ!?」
フェイクを入れた蹴りは脇腹に決まる。そこを抑えながら間合いを取る。鉛が数発顔を掠るが、動じなかった。
「俺ならアイツを幸せにしてやれる。お前よりも…」
「無駄だ。彼は深い眠りについてるぞ」
「お前には何かと負けてきた。悔しいがそれは認める。でもな…」
隙を狙って拳銃をライフルで撃ち飛ばし、奴が驚いてる間に一気に間合いを縮める。…やっぱりリボーンじゃねぇな。アイツならここで目を閉じねぇ。
「ひなだけはお前に譲れねぇ。俺の方がアイツを愛してるぞコラ」
腕を掴み、そのまま身体を投げ飛ばし背を向けた。背後からは音もせず、勝負は決まったようだ。
いち早くひなに加勢しようと駆け出した足が何かに掴まれそのまま身体が倒れる。俺に馬乗りになったのはリボーン。…チッ。まだ勝負つかなかったか。
「…俺の方がひなを愛してるぞ。お前とは雲泥の差だ」
「!まさかお前…」
目の前のリボーンはニヤリと笑った。そう…何時もと同じように。
「俺があんな野郎に易々と負ける訳ねぇだろ。俺を誰だと思ってやがる」
俺が助けてやったっつーのに。…相変わらず口が減らねぇ奴だな。
(お前、嬉しそうな顔してるぞ)
(…リボーンがいなかったらひなを独占出来たぞコラ)
(俺がアイツを放っておくわけねぇだろ)
(チッ…さっさとひなに加勢するぞ)
(…その必要はねぇみたいだけどな)