Love△Triangle
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『コロネロってさ』
『何だコラ』
『キスだけは優しいよね』
ブッと飲んでいた水を勢いよく吹いた。
『うわー。汚いなぁ』
『お、お前が変なこと言うからだろ!』
『だって本当の事だし。抱きしめる時は力強いのに』
『…キスも荒い方がいいのかコラ』
今にも襲いかかりそうなコロネロに慌てて首を振る。
『違う違う!私は優しい方が好きだよ。…大切にされてるって感じする』
「っ!」
勢いよくコロネロを突き放す。
「な、何やってんの…」
「まだ分かんねぇのか」
一歩一歩近付いてくる一方で私はゆっくり後退りする。
「ひな」
何で、何でそんな目で見るの。私は貴方を突き放したでしょう?
その時だった。
反射的に後ろに跳んだ私達の間を鉛弾が通過したのは。
ドレスの下から銃を取り出し向けた先に居たのは、
「…リボーンさん」
真顔の彼は何処となく恐かった。
「悪いな、トイレ行ってくる」
嘘をついて令嬢達の輪から抜ける。何故かひなが助けを求めている気がした。
嫌な予感しかせずに足早とベランダへ向かう。
遠く見えたベランダにはひなと見知らぬ男が居た。手を引き無理矢理連れていこうとしているようだ。あの野郎…。拳銃に手を伸ばそうとする前に金髪が見えた。
その男は、コロネロだった。睨みでも効かせたんだろう、男は慌ててこっちへやって来た。
「オイ」
「んだよ…リ、リボーンさん!」
「アイツに二度と近付くんじゃねぇぞ」
わざと低い声でそう言えばコクコクと素早く頷き足早にホールを去っていった。
それを見送ると、コロネロがひなの腕にキスをしているのが目に映った。それだけなのに、何故か心の中がモヤモヤした。仲良さそうに話す二人はまるで恋人のようだった。その空気に俺が入り込むことは出来なかった。
…退散するか。踵を返そうとした時に、コロネロがひなにキスをした。…それから先はあまり覚えていない。気付いた時にはコロネロ目掛けて撃っていた。
「な、何すんだよコラ!」
「部下がどこぞの輩に襲われてたんでな。助けただけだ」
するとひなは急いで俺の元へ駆け寄ってきた。何故か黒いモヤモヤしたものも消えていた。
「帰るぞ」
「は、はい!」
ひなの手を引き、ベランダを後にする。
「オイ待てコラ!」
「しつこい男は嫌われるぞ」
その言葉に舌打ちしながらもコロネロは納得したようだ。後を追ってこない。
「ひな!」
コロネロに呼ばれてもひなは下を向いたままだった。
「俺は認めねぇからな!諦めないぜコラ」
その言葉を聞いて振り返ったひなだったが、俺は無理矢理手を引き足早にホールから出た。
「すみません」
その顔を俯いたまま。
「…それは何に対してだ」
ついキツイ口調で尋ねてしまう。ゆっくり顔をあげたひなを見て、しまったと後悔した。
「わ、私は…」
涙が出ないように必死に堪えているようで。辛いこともあるはずなのにいつも笑っていたから…こんな顔は見たことがない。そんな顔にしたのは自分か…いやコロネロか。そのことに我慢出来なくなった。
「もういい…何も言うな」
気付いた時にはひなを抱きしめていた。想像していたよりも小さくて…すぐに壊れてしまうようだった。
「リボーンさん…」
「泣け。俺以外には誰も居ない」
そう言うと俺の胸元で小さい啜り泣きが聞こえ始めた。俺はそれを聞こえないフリをして、ただずっと抱きしめ続けた。
(この気持ちは何か…そんなの餓鬼じゃねぇし分かってる)
(ただ、初めて感じたこれを俺は認めたくなかっただけだ)