Love△Triangle

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「はいっ!捕まえた」

追い付いてハグすると、家継はぶーっと口を尖らせた。


「早過ぎー!手加減してよー」

「さっき手加減したら本気出せって言ったのはそっち」

「大人げないぞ!」

勢いよくタックルしてくる家継を支えきれずに二人一緒に芝生に倒れた。家継のススキ色の髪が当たってくすぐったい。



「次は何する?」

「んー…ひなと一緒に寝る!」

にこりと笑った家継は、ボスと京子さんの面影が見えた。やっぱり親子だなって思う。


腕を怪我した。っていっても大したことないのに、過保護なボスと上司に無理矢理休まされた。仕方ないから自主トレでもと地下に行けば、必ず守護者の誰かしらが居て、追い返されるのだ。
だから代わりといってはなんだけど、ボスの息子の家継と遊んでいる。彼は今十歳で、本当に元気がいい。私こんなに若い頃あったっけ?



「ひなって彼氏いないのか?」

「えっ…?」

「だって休みなのにデートとか出掛けないだろー」

今の子供はませているんだろうか。私は家継の両頬を横に伸ばした。



「子供がそんなこと聞くんじゃありません!」

「おおもにゃにゃいひー(子供じゃないしー)。ひゅーかひゃなへ(つーか離せ)!」

私は笑って勢いよく離すと仕返しにべしっと叩かれた。


「やったなぁー!」

代わりにこしょこしょすると家継もやってきて、攻防戦を繰り広げた。端から見たら変な光景だろうけど私達は気にせず笑い合った。






「…何やってんだ?」

呆れたように溜息が聞こえ、顔を上げるとリボーンさんが居た。


「オイ餓鬼。ひなに近づくんじゃねぇ」

ひょいっと軽々と家継の首根っこを掴み、宙に浮かせるリボーンさん。



「は、離せ!悪魔!!」

「ふーん。悪魔ってのは俺のことか?」

「ちょっと!リボーンさん」

リボーンさんから家継を取り戻す。家継はすぐに私の背に隠れた。



「子供相手に今本気出そうとしましたよね?!」

「それがどうした。コイツが悪い」

舌を出す家継に向かってぎろりと睨んだ。


「それにコイツはいちいちお前にべったり過ぎるんだ」

「リボーン、ヤキモチでも焼いたのー?」

「そうだが?」

からかいながら聞いたであろう家継の質問にリボーンさんはあろうことか真顔で答えた。




「俺はひなが好きなんだ。妬くのは当然だろ?」

「リ、リボーンさん…!」

この人は何をおおっぴらに言うんだろうか。昨日も散々恥ずかしい思いをしたのに。




「ひなは渡さないぞ!」

私の前に立って大きく両手を広げた。まだ子供なのに家継の背中は頼もしく見えた。


「ひなは俺と結婚するって誓ったんだぞ!」

「…えっ?」

「忘れたの?この前遊んだ時にしたじゃん!」

あ。思い出した。
二週間前だったっけ。私と家継は"〇〇ごっこ"というのをやっていた。マフィアとか侍とか、忍者ごっこもやったりした。その時に、新婚さんごっこたるものもやり、指輪交換とか誓いの言葉も立てたのだ。



「餓鬼が。それは遊びの世界だろ」

「俺は本気だったぞ!それにキスもしたしな」
いいだろー、と家継。


「キスって…本当か?」

「一応頬っぺたなんですけどね」

苦笑いして答えるとリボーンさんはホッと息をついた。



「オイ、家継」

「な、なんだよ」

リボーンさんが襲い掛かってくると思ってるのか、家継は戦闘態勢を取る。



「お前の家庭教師として、一つレッスンしてやる」

ニヤリと笑うリボーンさん。…嫌な予感しかしない。この前もこんな風に悪寒がしたような。そろーりと一歩後ろに下がるとガシッと怪我してない右腕を掴まれた。




「…何ですか。私用があるんですけど」

「お前棒読みだぞ。嘘ついてるだろ」

「で。レッスンって何だよ、リボーン」

家継は痺れを切らしたようだ。




「お前に大人のキスを教えてやる」

「本当か?!…でも相手居ないぞ」

ちょっとまじで離して下さい!なんで掴んだままなんですか?!



「まぁ一先ず見てろ」

リボーンさんに引き寄せられ、くいっと顎を持ち上げられた。家継のポカンとした顔が見える。



「ひな…」

ゆっくりと端正な顔が近付いてくる。ああ、また私はこの人から逃れられないんだろうな。





「家継ー!」

突然、大きな声がして、リボーンさんに隙が出来た瞬間を狙い私は彼から離れた。


「お前、今から母さんと買い物行くんだろ?」

「あっ!」

「ほら、京子待ってるぞ。早く行きな」

家継は大きく頷くと、また遊ぼうなと私に言って駆けて行った。



「チッ…ダメツナが」

「え?!俺何かした?」

「いえボス、助かりました」

不機嫌オーラ全開のリボーンさんと感謝の言葉を述べる私を見て、状況を察知したらしい。すぐ苦笑いになった。


「落ち着けよリボーン。チャンスはいくらでもあるだろ?」

「言われてみればそうだな」

前言撤回。…ボス、あなたは何で煽るんですか。怨みますよ。



「ああ、そうだ。ひなにお客様だよ」

「私に?誰ですか」

リボーンをちらりと見て、すぐに私に向き合った。




「コロネロだよ」






(よう。ひな)
(…久しぶりコロネロ)
(オイ。何でリボーンまで居やがる)
(居ちゃ悪いか。監視役だ)
(別にやましいことはしねぇよ!………多分)

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